峠の走り屋全盛期の頃、当時の憧れのバイクは何と言ってもNSR250R(MC18)でした。その中でも88年式のNSRは非常に人気があり、カタログ表記で45馬力というスペックだったのですが、実際には60馬力以上出ていたのではないかという謎バイクです。そんな憧れのバイクがどうしても欲しく、中古で89年製、走行距離1万キロの一年落ちの物をで購入しました。42万円で即決しました。
驚きの加速を体験
納車された日、始めて試し乗りをしてみたのですが、驚きの加速を体験出来ました。非常に軽い車体のため、簡単に前輪が上がってしまいますし、何よりその強烈な加速から、身体が後ろに持って行かれそうになります。身体が置いて行かれるだけなら、しっかりとハンドルを握り、ニーグリップをすればよいのですが、そうすると今度は体中の血液が全て後ろに持っていかれるような加速Gがかかり、最初は本当に怖く、アクセルを開けることが出来ませんでした。
このバイクが一番イキイキと走るのは、やはり峠道で、どんなに寝かせていっても転倒するという気が全くせず、狙ったラインをはずさないのです。例えるなら、スノーボードでカービングをしている時に、気持よくラインに乗っている時のような感覚で、それを一度体験してしまうと、何度も何度もコーナーを攻めたくなります。エンジンの馬力は言うに及ばず非常にパワフルで、コーナー出口で乱暴にアクセルを開けると簡単にウィリーしてしまいますので、慎重なアクセル操作が必要でした。
峠に行く度にセッティング
難点があるとすれば、2スト特有の不具合とキャブレター仕様の為、セッティングが非常に出づらいという事です。最近のバイクのように、インジェクションを使っていればそういう事も無いのですが、NSRは峠に行く度にセッティングが必要で、その当時走っていた人がメカに強いのはこういう理由からくるものでしょう。バイクの乗り方、アクセルの開け方、ブレーキのかけ方を教えてくれたのはこのNSRです。
最近では若い人は2スト自体を知らない人も多くいますし、乗りたくても、周囲が止める傾向にあります。それくらい、すぐに調子が悪くなるバイクなのですが、バイクのセッティングが自分でできるようになれば、よりそのバイクが自分のモノになってきますし、自分だけの色に染めることも出来て、親近感が湧くものです。メカに強くなりたい、バイクを弄る楽しさを知りたいという方は、NSRの様な2ストエンジンのバイクに挑戦してみるのも良いのではないでしょうか。