私がまだ小学生の頃、周りにはバイクに乗っている人は居ませんでした。私自身、車やバイクに対して特別な感情もなく「バイク=交通の足」といった程度に考えていました。しかし、小学校5年生になった頃、いわゆるヤンキー漫画を読んだことをきっかけに「バイクに乗りたい」と思うようになりました。そして、バイク雑誌を購入しどんなバイクがあるのかと興味本位で眺めていたところ、あるバイクにひと目で心を奪われてしまいました。
16歳になったらこのバイクに乗ると心に決め
そのバイクは名車と言われるヤマハRZの正統後継機として作られ、独特の形状のフレームを持ち女性を思わせるような美しいフォルムを持っていました。また、今主流の4stではなく、ピーキーなエンジンと称される名車TZR250のエンジンを載せた「ヤマハ R1-Z」でした。単純にそのバイクを見たときは「カッコいい」という印象でしたが、少しずつバイクの事を知るにつれその魅力の大きさに気づきどんどん好きになっていきました。そして、「16歳になったらこのバイクに乗る!」と心に決めました。
中学3年間、私は他に目もくれることなくR1-Zに乗ることを夢見てお金を貯めました。お小遣いやお年玉はもちろん、何かと家の手伝いなどをして親にも了承してもらえるように努力しました。そして、中学を卒業する時に両親からR1-Zをプレゼント(自分もお金は出した)してもらいました。
どうしても初期型が欲しくて
その時購入したのは、規制前の45psの出力を誇る初期型のR1-Zです。最終世代の方がエンジン特性やシート形状など様々な部分に変更が施されていて乗りやすいものとなっていましたが、私はどうしても初期型が欲しいと思っていたのでバイクショップ数件に初期型のR1-Zを探してもらうようにお願いをし、半年ほどかけて見つけた物でした。その為、非常に愛着を持って乗ることが出来ました。
R1-Zの特徴は2st特有のピーキーな特性と、その軽い車体を軽々とパワーリフトさせるパワーだと思います。その為、初めて走らせたときはビクビクしながら運転したのを覚えています。紛いなりにもレーサーレプリカですのでとにかく「速い」バイクでした。250ccながら400ccはもちろん、下手な750ccなら負けないと思える程でした。
加速感は病み付き
パワーバンドに入った時の「体を後ろに引きずり降ろされそうになる加速感」は病み付きでした。それでいて軽い車体の特性を生かした軽快なハンドリングとレスポンスの良いブレーキと、乗っていて「楽しい」と思えるバイクです。250ccと言うことで車検もありませんし、ランニングコストはそれほどかからないという点も良いと思います。
ただ、さすがにサイズは大きくないので体が大きい人が載るとおもちゃのように見えてしまう点に少し物足りなさも感じましたが、個人的には「あばたもえくぼ」と言う感じで気になりませんでした。
高校3年間、専門学校、そして社会人になってからも乗り続け、峠に行ったり友人とツーリングを楽しんだりと長きにわたって私に思い出を提供してくれました。ツーリングなど長距離を走行する場合にはオイルを携行する必要があって面倒でしたが、その手間も「可愛さ」として楽しむことが出来ました。
残念ながらすでに手放してしまっていますが、もし機会があればもう一度購入したいと思えるバイクです。