フィアットは1999年9月のフランクフルト・ショーにおいて、6年ぶりのフルモデルチェンジにより2代目となった新型「プント」を発表しました。先代から刷新されたプラットフォームに、Bセグメント・モデルとしては「127」以来となる社内デザインによるボディが架装されました。足回りも一新され先代から乗り心地が向上、トータルバランスの高さに磨きが掛かりました。
グリルレスのフロントマスクで登場
ボディタイプは3ドア及び5ドアハッチバックのラインナップで、先代に設定のあった2ドアカブリオレは廃止されました。エクステリア面では、当初はグリルレスの個性的なフロントマスクが与えられた他、5ドアは先代の6ライトウィンドウから4ライトウィンドウに変更されました。ボディサイズは全長3,800mm×全幅1,660mm×全高1,480mmで、先代から若干拡大されました。
又、ホイールベースは10mm長い2,460mmに設定され、車両重量も若干増加し860~1,055kgとなりました。サスペンション形式は、フロントはマクファーソンストラット式が改良を加えられた上で踏襲され、リアはトレーリングアーム式からトーションビーム式に変更されました。又、ステアリングはラック&ピニオン式を踏襲しつつ、パワーアシストが油圧式から電動式に変更されました。
駆動方式はFFを踏襲し、エンジンは1.2L直4SOHC8V(最高出力60ps/最大トルク10.4kgm)、同DOHC16V(最高出力80ps/最大トルク11.6kgm)、1.8L直4DOHC16V(最高出力131ps/最大トルク16.7kgm)のガソリン3種類と、1.9L直4SOHC NA(最高出力60ps/最大トルク12kgm)及び同ターボ(最高出力80ps/最大トルク20kgm)のディーゼル2種類が用意されました。
トランスミッションは5速/6速MTの他、先代に引き続き富士重工業製のECVTが設定されました。グレード体系は、1.2Lガソリン車及びディーゼル車に「S」「SX」「ELX」「HLX」が設定された他、1.2LガソリンDOHC車には「スポルティング」も用意されました。トップグレードは、3ドアボディに1.8Lガソリンエンジンを搭載するホッチハッチ「HGT」でした。
フェイスリフトでフロントマスクを一新
その後、2003年にフェイスリフトが実施され、フロントマスクがダミーグリルと大型ヘッドランプが備わるコンサバティブな意匠に変更されました。そして2005年に事実上の後継モデル「グランデ・プント」がデビューした後も、マイナーチェンジにより車名を「プント・クラシック」と改めた上で2010年まで生産が続けられました。
日本市場においては、2000年6月に1.2L DOHCエンジン+ECVT搭載の5ドアモデル「ELXスピードギア」と、1.8Lエンジン+5速MTを搭載しアバルト製の内外装が備わる3ドアモデル「HGTアバルト」が上陸を果たしました。次いで2003年1月、ELXスピードギアをベースに仕様向上を図った「HLXスピードギア」が追加されました。
追って同年12月には、フェイスリフト版の「1.2 16Vエモーションスピードギア」と「1.8 16V HGT」の導入が開始されました。そして2006年8月を持って、グランデ・プントと入れ替わる形で販売終了となりました。
プント (2005)の口コミ評価/新車購入インプレッション
以前、2005年式のフィアット・プント(型式GH-188A5)に、1年半程乗っていました。グレードは1.2Lエンジン搭載のエモーション・スピードギアで、アルファロメオ系ディーラーにて新車で購入しました。
輸入車としてはリーズナブル
購入価格は、総額で200万円を少し超える程度で、輸入車としてはリーズナブルでした。それまでは、同じフィアットのムルティプラに乗っていたのですが、全幅の広い3ナンバー車に不慣れだった事もあり、何箇所かエクボを作ってしまいました。
ムルティプラには愛着を感じていたのですが、さすがに自分の運転技術のせいで傷や凹みが増えていくのは忍びなく、身の丈に合った車に買い替えようと決心しました。候補に何台か挙がったのですが、フィアット車のフィーリングが気に入っていた事と、アルファロメオのディーラーとのお付き合いもあったので、フィアット・プントに落ち着きました。
ヒップラインの処理などはさすがイタリアン
スタイリングの点では、さすがに個性派ムルティプラに比べればコンサバなイメージでしたが、ヒップラインの処理などはさすがイタリアンと感じさせるセンスがあり、これはこれで良いデザインだと思いました。
実際にプントが納車されると、まず街中を走ってみましたが、やはり5ナンバーのコンパクトカーは取り回しが楽な事を痛感しました。狭い裏路地にも躊躇なく入ってスイスイ走れるのが、嬉しく感じました。ただ、最小回転半径が意外と大きく(5.25m)、Uターンはあまり得意ではありませんでした。
一方、エンジンのフィーリングはさすがフィアット車だけあり、僅か1.2LのNAエンジンながら想像以上に元気があるので、街中でも高速道路でもストレスがありませんでした。これには、スバル製CVTの効率の良さも貢献していたに違いありません。
CVTならではのスムーズな加速フィーリング
その後のフィアット車は、CVTを捨ててAMTに切り替えましたが、CVTならではのスムーズな加速フィーリングは捨て難い良さがありました。ただし、ペダルのレイアウトは褒められたもではなく、2つのペダルが左にオフセットしている為、ブレーキを踏むつもりがうっかりアクセルに足を掛けてしまう事もありました。
一方、ハンドリングは素直で、ロードホールディングも悪くなかったので、ワインディングロードでも結構楽しく走れました。足回りは少し硬めでしたが、不快なハードさではなく、むしろしっかりした乗り心地に感じられました。
総合的に見て、右ハンドル化に伴うペダルレイアウトだけは難がありましたが、それ以外は本当にトータルバランスに優れた良いコンパクトカーでした。最近のフィアット500やパンダと比べても、車としての完成度は劣らないと思います。