トヨタのミッドシップ・スポーツカー「MR-S」は、1984年に初代モデルがデビューした「MR2」の後継モデルとして、1999年10月に発売されました。MR2がフィクスドヘッドクーペのボディでハイパフォーマンス路線であったのに対し、MR-Sではボディがソフトトップカブリオレに変更されると共に、軽量な車体に控えめなパワーのエンジンを搭載するライトウエイトスポーツ路線に転向しました。
MR2から全長を短縮すると共に大幅に軽量化
スタリングは、ボディ形状の変更に伴い基本的なプロポーションがMR2から大きく変化した他、リトラクタブルヘッドランプを廃止し固定式ヘッドランプを採用した為、フロントマスクの印象も全く異なるものとなりました。ボディサイズは全長3,895mm×全幅1,695mm×全高1,235mmで、2代目MR2から全長が275mm短縮された一方、ホイールベースは50mm延長され2,450mmとなりました。
車両重量は、発売当初は960~970kgと1トンを切っており、1,210~1,290kgであった2代目MR2から大幅に軽量化されました。サスペンション形式は、MR2同様の4輪ストラット式が踏襲されました。ミッドに搭載されたエンジンは、MR2の2L直4DOHCの3S-GE型(NA)及び3S-GTE型(ターボ)に代え、1.8L直4DOHC NAの1ZZ-FE型(最高出力140ps/6,400rpm・最大トルク17.4kgm/4,400rpm)に置換されました。
スペック的には3S-GE型の200ps/21kgm、3S-GTE型の245ps/31kgmから大幅にダウンしたものの、前述したような軽量化により、パワーウエイトレシオの低下はある程度補われました。トランスミッションは、発売当初は5速MTのみの設定でした。グレード体系は、ベースグレードの他に、アルミホイールなどを採用した「Sエディション」と装備を簡略化した「Bエディション」が設定されました。
トヨタ MR-SのCM(1999)
AMT仕様を追加し、ボディ剛性を強化
そして翌2000年8月に、シングルクラッチ式の5速AT(AMT)仕様が追加されると同時に、トップグレードとして「Vエディション」が追加されました。次いで2002年8月にマイナーチェンジを実施し、前後のランプ形状の変更やフォグランプ内蔵バンパーの採用など外装変更が行われると共に、リアタイヤをサイズアップ、同時にMT車・AT車共にギア数が6速化されました。
又、ボディ剛性の強化が行われた事もあり、車両重量が10kg増加しました。続いて2004年1月に一部改良を行い、再度ボディ剛性を強化した為、車両重量が更に30kg増加し全車1トンを超えました。次いで2005年12月の一部改良で、インパネにフォグランプインジケーターを追加した他、ブレーキランプとテールランプの配置が入れ替えられました。
続いて2007年1月に、「Vスペック」をベースに内外装の一部に専用の加飾を施すと共に、専用カラーを設定した1,000台限定モデルの「Vエディション・FINAL VERSION」が発売され、カタログモデルは全て生産終了となりました。そして同年7月、スポーツカー市場の縮小を受け「Vエディション・FINAL VERSION」も生産終了となり、トヨタのミッドシップスポーツカーは市場から姿を消しました。