イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティン・ラゴンダは、2001年に「V8ヴァンテージ」の実質的な後継モデルとなる新型グランツーリスモ「V12ヴァンキッシュ」を発売しました。アルミニウムやカーボンファイバー素材の多用により軽量化が図られたボディに、新開発のV12エンジンを搭載した高性能モデルでした。
優れた空力特性を実現
ボディタイプはフィクスドヘッドの2ドアクーペのみの設定で、2シーター仕様と2+2シーター仕様の選択が可能でした。スタイリングはV8ヴァンテージから大きく変貌し、曲線基調の流麗かつ抑揚の効いたフォルムが採用されました。同時に、Cd値0.33の優れた空力特性を実現したことも特徴でした。
ボディサイズは全長4,665mm×全幅1,923mm×全高1,318mmで、V8ヴァンテージから若干縮小されていました。その一方で、ホイールベースは80mm長い2,690mmに設定されました。車両重量は1,820kgで、V8ヴァンテージから150kg以上の軽量化を果たしていました。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンはオールアルミ製の5.9L V12DOHC(最高出力456ps/6,500rpm・最大トルク56.7gm/5,000rpm)が搭載されました。
トランスミッションは2ペダルMTを採用
組み合わせられるトランスミッションは電動油圧式6速MT(2ペダルMT)で、シフト操作が必要な「SSM(セレクトシフトマニュアル)」とシフト操作不要の「ASM(オートシフトマニュアル)」の選択が可能でした。また、パドルシフトも装備されていました。パフォーマンスは最高速度315km/h・0-100km/h加速4.7sで、当時のアストンマーティン車として最速を誇っていました。
サスペンション形式は、フロントはV8ヴァンテージ同様のダブルウィッシュボーン式が踏襲され、リアはド・ディオン・アクスル式からフロント同様のダブルウィッシュボーン式に変更されました。ステアリングはロック・トゥ・ロック2.73回転のラック&ピニオン式で、ブレーキはフロントに355mm径、リアに330mm径のディスクローターが備わる4輪ベンチレーテッド・ディスク式が採用されました。
また、ホイール&タイヤは、フロントに9J×19インチホイール+255/40×ZR19タイヤ、リアに10J×19インチホイール+285/40×ZR19タイヤの組み合わせが装着されました。安全装備面では、SRSデュアルエアバッグシステムやABS、トラクションコントロールが標準で備わっていました。また、盗難防止システムとしてイモビライザーやセントラルロッキングシステムが採用されました。
その後2004年に、5.9Lエンジンのアウトプットを最高出力527ps/7,000rpm・最大トルク58.8gm/5,800rpmまで高めて搭載し、最高速度321km/hの性能を持つ高性能版「ヴァンキッシュS」が追加されました。そして2007年に特別仕様車「アルティメット・エディション」がリリースされたのち、同年に後継モデル「DBS V12」にバトンを渡し生産終了となりました。