イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティンは1993年、1989年に発売した高級グランツーリスモ「ヴィラージュ」をベースとした高性能バージョン「ヴァンテージ」を発売しました。ヴァンテージを名乗るモデルのリリースは、1989年に「V8ヴァンテージ」が生産終了となって以来4年ぶりのことでした。
専用ボディを採用
ボディタイプは、当初は2ドア・2+2シーター仕様のクーペのみが用意されました。エクステリアは、前作V8ヴァンテージが基本的にベースモデルのV8譲りであったのとは対照的に、ルーフとドアをのぞきヴィラージュから全面的に刷新されていました。同時にエアロパーツやブリスターフェンダーが採用され、より迫力ある雰囲気を醸すものとなっていました。
さらに空力特性も僅かながらも改善され、Cd値は0.01ポイント低い0.34を実現していました。ボディ・ディメンションは全長4,745mm×全幅1,924mm×全高1,330mm、ホイールベース2,610mmで、全幅が僅かに拡大されたことをのぞきヴィラージュと同一でした。車両重量は1,990kgで、ヴィラージュ・クーペから40kg増加していました。
スーパーチャージドエンジンを搭載
駆動方式はFRを踏襲し、エンジンはヴィラージュに搭載される5.3L V8DOHCにメカニカルスーパーチャージャーを装着したものが搭載されました。アウトプットは最高出力558ps/6,500rpm・最大トルク76gm/4,000rpmで、ヴィラージュから223ps/27.6kgmもの大幅な向上を果たしていました。トランスミッションは、ヴィラージュの5速MTまたは3速ATに代わり6速MTが組み合わせられました。
パフォーマンスは最高速度300km/h・0-60mph加速4.5sという極めて優れたもので、ヴィラージュとの比較では最高速度で47km/h勝り、0-60mph加速タイムは2.3s短縮されていました。サスペンション形式は、ヴィラージュ同様のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:ド・ディオンアクスル式が踏襲されました。
また、4輪ベンチレーテッド・ディスク式を踏襲するブレーキは、ディスクローター径がフロントは302mm→362mmに、リアは279mm→285mmに拡大されていました。タイヤサイズもパワーの向上に対応するため、ヴィラージュの255/60VR16よりもワイドかつ扁平な285/45ZR18が装着されました。
さらなる高性能版が登場
その後1998年に、5.3Lスーパーチャージドエンジンのアウトプットを最高出力608ps/6,200rpm・最大トルク83gm/4,400rpmまで高めて搭載し、最高速度322km/h・0-60mph加速4.3sの動力性能を持つ「ヴァンテージ600」がリリースされました。次いで翌1999年にはル・マン24時間レース優勝40周年を記念し、ヴァンテージ600をベースに専用の内外装や足回りを採用した限定車「V8ヴァンテージ・ルマン」がリリースされました。
そして2000年に、ソフトトップ・コンバーチブルの「ヴァンテージ・ヴォランテ」が9台製造されたのち、同年をもって生産終了となりました。