イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティンは、1988年に「V8」シリーズの後継モデルとなる新型高級スポーツカー「ヴィラージュ」を発表、翌1989年にデリバリーを開始しました。シャシーや足回りなどはV8譲りであった一方、スタイリングが一新されるとともに、コストダウンのため他メーカーの内外装部品が流用されました。
V8シリーズからボディを拡大
ボディタイプは、当初はフィクスドヘッドボディの2ドアクーペのみの設定でした。スタイリングは、個性的であると同時に古典的な雰囲気を醸していたV8シリーズから一転し、モダンかつやや無機質なものとなりました。また、空力特性向上に注力され、Cd値は0.35を実現しました。ボディサイズは全長4,745mm×全幅1,918mm×全高1,330mmで、V8シリーズから全長と全幅が若干拡大されました。
一方、2,610mmのホイールベースに変更はありませんでした。車両重量は1,950kgで、V8シリーズから100kg以上増加していました。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンもV8シリーズ譲りの5.3L V8DOHC(最高出力335ps/6,000rpm・最大トルク48.4gm/4,000rpm)が搭載されました。組み合わせられるトランスミッションは、5速MTまたは3速トルコン式ATでした。
MT仕様のパフォーマンスは、最高速度253km/h・0-60mph加速6.8sでした。サスペンション形式はV8シリーズと同様、フロントにダブルウィッシュボーン式、リアにド・ディオンアクスル式が採用されました。また、ブレーキはフロントがベンチテーテッド型の4輪ディスク式で、ディスクローター径はフロントが302mm、リアが279mmとなっていました。
コンバーチブルとワゴンを追加
タイヤは、前後とも255/60VR16サイズが装着されました。その後1992年に、電動ソフトトップが備わる2ドアコンバーチブル「ヴィラージュ・ヴォランテ」と、3ドアステーションワゴンの「ヴィラージュ・シューティング・ブレーク」がラインナップに加えられました。さらに、派生モデルとして4ドアセダンの「ラゴンダ」が受注生産方式でリリースされました。
次いで翌1993年には、エアロパーツやブリスターフェンダーが備わるボディに5.3L V8DOHCスーパーチャージド・エンジン(最高出力558ps/6,500rpm・最大トルク76gm/4,000rpm)+6速MTを搭載し、最高速度300km/h・0-60mph加速4.5sの動力性能を持つ高性能版「ヴァンテージ」が追加されました。
続いて1996年、標準版であるヴィラージュの車名が「V8クーペ」および「V8ヴォランテ」に変更されました。一方ヴァンテージは、1998年に5.3Lスーパーチャージドエンジンのアウトプットを最高出力608ps/6,200rpm・最大トルク83gm/4,400rpmまで高めて搭載し、最高速度322km/h・0-60mph加速4.3sの動力性能を持つ「ヴァンテージ600」に発展しました。
そして2000年、後継モデル「ヴァンキッシュ」にバトンタッチして生産終了となりました。