イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティン・ラゴンダは1963年、1958年にリリースした「DB4」の後継モデルとなる新型グランツーリスモ「DB5」を発売しました。DB4から排気量が拡大され一段と性能が向上すると同時に、映画「007ゴールドフィンガー」などでボンドカーとして使用され高い知名度を獲得しました。
クーペとカブリオレのほかシューティングブレークも生産
2+2シーター仕様のボディはマグネシウム合金製で、ボディタイプはメーカー純正としてフィクスドヘッドボディの2ドア・クーペとソフトトップが備わる2ドア・カブリオレが用意されたほか、コーチビルダーのハロルド・ラドフォードの手により3ドア・シューティングブレークがごく少数製造されました。
スタイリングはDB4のイメージを踏襲しながらも、より流麗なフォルムに変貌していました。クーペのボディ・ディメンションは全長4,572mm×全幅1,676mm×全高1,346mm、ホイールベース2,489mmで、25mm高められた全高をのぞき「DB4・シリーズ5」と共通でした。車両重量は1,465kgで、DB4から100kgほど増加していました。
サスペンション形式は、フロントにダブルウィッシュボーン/コイル式、リアにド・ディオン・アクスル式が採用されました。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンはDB4から排気量が0.3L拡大されたオールアルミ製4L直6DOHC SU3連キャブレター仕様(最高出力286ps/5,500rpm・最大トルク39.8gm/3,850rpm)が搭載されました。
トランスミッションは当初は4速MTが標準で、オプションでOD付き4速MTとボルグ・ワーナー製の3速トルコン式ATが設定されました。その後ほどなくして、MTはZF製の5速に置き換えられました。この5速MT仕様のパフォーマンスは、最高速度が229km/h、0-60mph加速タイムが8.1sでした。また、ブレーキはフロントに292mm径、リアに274mm径のディスクローターが備わる4輪ディスク式が採用されました。
高性能版を追加
また、ホイール&タイヤは、前後とも5.5J×15インチのワイヤーホイールとエイボン・ターボスピード6.70-15タイヤの組み合わせが装着されました。一方インテリアは、フルレザーのトリムやウールパイルカーペットが備わるラグジュアリーな仕様となっていました。そして翌1964年、クーペに高性能版の「DB5ヴァンテージ」が追加されました。
4L直6エンジンは圧縮比が8.8:1から9.4:1に高められるとともに、カムシャフトの変更やキャブレターの変更(SU→ウェーバー)などにより最高出力が330ps/5,500rpmまで高められていました。次いで1965年には、コンバーチブルをベースに異なる意匠のフロントグリルやリアバンパーなどを採用した派生モデル「ボランテ」がリリースされました。
そしてこの年、後継モデル「DB6」の発売にともないDB5シリーズは生産終了となりました。