イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティン・ラゴンダは1977年、1972年にリリースした高級グランツーリスモ「V8」をベースとした高性能バージョン「V8ヴァンテージ」を発売しました。スーパーカーと呼ぶにやぶさかでない優れた動力性能を実現したモデルで、のちにコンバーチブル版の「V8ヴァンテージ・ヴォランテ」も登場しました。
リアスポイラーを装備
フィクスドヘッドの2ドア・2+2シーター仕様クーペのみが用意された初期型のスタイリングは、基本的なフォルムはベースモデルのV8譲りであったものの、パワーバルジ前部に設けられたエアインテークや後付けタイプのリアスポイラーなどにより差別化が図られていました。ボディ・サイズは全長4,585mm×全幅1,829mm×全高1,346mmで、全長と全高がV8とは若干異なっていまいた。
ホイールベースは同一の2,610mmで、車両重量も同等の1,815gでした。サスペンション形式は、 V8同様のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:ド・ディオン・アクスル式が踏襲されました。駆動方式もFRが踏襲され、エンジンはV8に搭載される5.3L V8DOHCのチューニング版が搭載されました。
圧縮比のアップやビッグバルブおよび専用カムシャフトの採用、4基のウェーバー・キャブレターの大径化などにより、最高出力はベースモデルを大きく上回る380psに達しました。トランスミッションはZF製の5速MTが組み合わせられ、ブレーキは4輪ベンチレーテッド・ディスク式が踏襲されました。
より高性能なバージョンが登場
また、ラック&ピニオン式を踏襲するステアリングは、ロック・トゥ・ロックが2.9回転から2.8回転にクイック化されていました。そして翌1978年、より滑らかな形状のパワーバルジと一体型リアスポイラーを備えたボディに、5.3Lエンジンの最高出力を395psに高めて搭載する「オスカー・インディア・バージョン」が追加されました。
そのパフォーマンスは、最高速度274km/h・0-60mph加速5.4sという極めて優れたものでした。また、このモデルはインテリアにも変更が施されており、インパネの素材にウォールナットに代わりブラックレザーが採用されていました。次いで1986年、前述した2ドア・コンバーチブルのヴァンテージ・ヴォランテがラインナップに加わりました。
同時に、クーペともどもエンジンに改良が加えられ、アウトプットが最高出力406ps/最大トルク53.9kgmとなりました。ヴァンテージ・ヴォランテのパフォーマンスは、最高速度が264km/h、0-60mph加速タイムが5.4sでした。さらに、オプションで6.3L V8エンジン(最高出力455ps)が用意されました。そして1989年、V8が後継モデル「ヴィラージュ」に切り替えられたことにともない、生産終了となりました。