イギリスの高級スポーツカーメーカーであるアストンマーティンは、2009年9月のフランクフルト・ショーにおいて5ドアハッチバックボディを持つ高級スポーツセダン「ラピード」を発表、翌2010年にデリバリーを開始しました。2ドア・スポーツクーペの「DB9」をベースに開発され、高性能とユーティリティの高さを両立したモデルに仕上げられました。
トランスアクスル・レイアウトを採用
DB9譲りのファストバックの流麗なフォルムと、同社製モデルならではの斜め上方に開く「スワンウイングドア」が備わるボディは、ボンネットフードとフロントドアを除きDB9から全面的な新設計が行われていました。ボディサイズは全長5,019mm×全幅1,929mm×全高1,360mmで、DB9との比較ではそれぞれ309mm×54mm×90mm拡大されていました。
また、ホイールベースも244mm長い2,989mmに設定されたほか、車両重量が190kgほど増加し1,950kgとなっていました。乗車定員は4名で、リアシートは大人二人のための十分なスペースを持つほか、シートバックを倒すことにより886Lの容量を持つラゲッジスペースが出現するなど、実用性も十分確保されていました。
駆動方式はDB9同様のFRを踏襲するとともに、トランスアクスルレイアウトを採用、前後重量配分は49:51を実現しました。エンジンは、DB9と共通の5.9L V12DOHC(最高出力477ps/6,000rpm・最大トルク61.2gm/5,000rpm)で、トランスミッションはZF製の6速トルコン式ATが組み合わせられました。
最新の電子デバイスを採用
パフォーマンスは最高速度303km/h・0-100km/h加速5.3sで、DB9との比較ではそれぞれ3km/h・0.5s劣るものの、サルーンとしては第一級のものでした。サスペンション形式はDB9と同様の4輪ダブルウィッシュボーン式で、減衰力を自動調整する「アダプティブダンピングシステム」が採用されました。
そのほか、電子デバイスとして車両安定化制御システムの「ダイナミックスタビリティコントロール」も装備されました。ブレーキは、フロントに390mm、リアに360mmのローターが備わる4輪ベンチレーテッド・ディスク式が採用されました。タイヤサイズはフロントが245/40R20、リアが295/35R20で、銘柄は専用に開発されたブリジストン製「ポテンザS001」が採用されました。
その後2013年にビッグマイナーチェンジが実施され、さらなる高性能化を図った「ラピードS」に移行しました。内外装デザインの変更やシャシーの改良などが図られたほか、5.9L V12エンジンにも改良が加えられ、アウトプットが最高出力558ps/6,750rpm・最大トルク63.2gm/5,500rpmに向上しました。それにともない最高速度が306km/hにアップし、0-100km/h加速タイムは4.9sに短縮されました。