ダイムラー・ベンツは1961年4月、1956年にリリースしたW120/121型「180/190」シリーズの後を継ぐ4気筒エンジン搭載の新型乗用車、W110型「190c/190Dc」を発売しました。その2年前に登場した6気筒エンジン搭載モデルW111型の弟分にあたり、シャシーやボディパネルの後半部分が流用された他、W111型セダンの特徴であったテールフィンも継承されました。
W111型から全長とホイールベースを短縮
ボディの構造は、W111型同様のフルモノコック構造が踏襲されました。ボディタイプは4ドアセダンのみで、W120/121型に設定のあったオープンモデルのロードスターは廃止されました。スタイリングは、Aピラーから後ろは基本的にW111型セダンと共通であったものの、全長の短い4気筒エンジンに合わせボンネットフードが短縮されました。
更にW111型との差別化を図る為、ヘッドランプが縦型から丸型に変更されるなどのモディファイが行われました。ボディサイズは、全長はW111型セダンより145mm短い4,730mmとなったものの、1,795mmの全幅と1,495mmの全高は実質的に同等でした。W120/121型セダンに対しては全長・全幅が一回り大きく、全高は低いディメンションとなりました。
ホイールベースは2,700mmで、丁度W111型とW120/121型の中間の長さでした。車両重量は1,225kgで、W120型190系からは40kg増加したものの、W111型「220S」に対しては100kg程軽く抑えられていました。サスペンション形式は、フロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:スイングアクスル式が踏襲されました。
駆動方式もFRが踏襲され、エンジンは当初、W121型「190b」からキャリオーバーされた1.9L直4SOHCガソリン(最高出力80ps/最大トルク14.5kgm)と、W121型「190D」時代から排気量が100cc拡大された2L直4SOHCディーゼル(最高出力55ps/最大トルク12kgm)が用意されました。トランスミッションは、従来同様4速MTが組み合わせられました。
フロントブレーキをディスク化
その他、パワーアシストを持たないリサーキュレーティング・ボール式のステアリングや、4輪ドラム式のブレーキはW120/121型と共通でした。その後、1962年に190cに4速トルコン式ATが設定され、翌1963年にはフロントブレーキがディスク化されると共に、2系統ブレーキシステムが採用されました。それと同時に、190Dcも4速ATの選択が可能となりました。
次いで1964年にパワーステアリングがオプション設定された事に続き、翌1965年にはマイナーチェジが実施され、外観面ではフロントフェンダー上に設けられていたターンシグナルランプがヘッドランプ下に移動された他、リアコンビネーションランプの意匠が変更されました。同時にエンジンがそれまでの3ベアリング式から5ベアリング式に改良されると共に、ラインナップが一新されました。
ガソリンモデルは190cに代わり、2L直4SOHC(最高出力95ps/最大トルク15.7kgm)搭載の「200」と2.3L直4SOHC(最高出力105ps/最大トルク17.7kgm)搭載の「230」が用意され、ディーゼルモデルはエンジンのスペックに変更はなかったものの、グレード名が190Dcから「200D」に変更されました。そして1968年、後継モデルW114/115型がデビューした事に伴い、生産終了となりました。