ダイムラー・ベンツは1951年4月のフランクフルト・ショーにおいて、戦後初の多気筒(6気筒)エンジン搭載車して、タイプ220(W187型)と共にその上級モデルとなるタイプ300(W186/188/189型)を発表しました。タイプ220が基本デザインを戦前まで遡るクラシカルなボディを持っていたのに対し、300では戦後モデルとして初めて新設計のボディが採用されました。
スタイリングは戦前/戦後型を折衷
当初のラインナップは、6ライトウィンドウの4ドアセダン「300」と4ドアカブリオレ「300カブリオレD」の2タイプで、そのスタイリングは独立式の前後フェンダーが備わる戦前型と、フラッシュサイド・フルワイズの戦後型を折衷したものでした。ボディサイズは、全高を除きタイプ220よりも一回り大きい全長4,950mm×全幅1838mm×全高1,600mm(セダン)/1,640mm(カブリオレ)でした。
又、ホイールベースはタイプ220より200mm以上長い3,050mmに設定され、車両重量は400kg程重い1,770kg(セダン)/1,820kg(カブリオレ)でした。サスペンション形式は、タイプ220と同様のフロント:ダブルウィッシュボーン式/コイル式・リア:スイングアクスル/コイル式で、駆動方式も同様にFRが採用されました。
フロントに搭載されるエンジンは、タイプ220用の2.2LユニットM180型のボア&ストロークを拡大した3L直6SOHCのM186型で、6:4.1の圧縮比とソレックス・ツインキャブレターにより最高出力115ps/最大トルク20kgmのアウトプットを発生しました。4速MTを介しての動力性能は最高速度155km/h・0-100km/h加速18sで、当時の乗用車としては優秀なものでした。
2ドアモデルを追加
そして同年10月のパリ・サロンにおいて、ホイールベースを2,900mmに短縮したシャシーに2ドアボディを架装した「300S」が発表されました。ボディタイプはオープンボディのロードスターとカブリオレA、そしてフィクスドヘッドボディのクーペがラインナップされました。ボディサイズは全長4,700mm×全幅1860mm×全高1,510mmで、300よりも短く広く低いディメンションとなりました。
搭載されたエンジンはM186型ソレックス3連キャブレター仕様で、7:8.1に高められた圧縮比により最高出力は35psアップの150ps、最大トルクは3.5kgmアップの23.5kgmを発生しました。それに伴い、パフォーマンスは最高速度が20km/h高い175km/hまで引き上げられた他、0-100km/h加速も3s短縮され15sとなりました。
次いで1954年、ステアリング形式がウォーム&ローラー式からリサーキュレーティング・ボール式に変更されると共に、300はエンジンのアウトプットを最高出力125ps/最大トルク22.5kgmに高めた「300b」に移行しました。更に翌1955年には、リアサスペンションの改良と共に3速トルコン式AT仕様の選択が可能となった「300c」に切り替えられました。
同時に、300Sはエンジンをボッシュ機械式燃料噴射仕様(最高出力174ps/最大トルク26kgm)に置換した「300Sc」に進化しました。次いで1956年、300cをベースに全長を205mm、ホイールベースを100mm延長したロングホイールベース仕様が追加され、翌1957年には300cに代わり、エクステリアのリニューアルと共にエンジンを燃料噴射仕様(最高出力160ps/最大トルク24.2kgm)に置換した「300d」が登場しました。
そして1958年4月に300Scがカタログ落ちし、残る300dも1962年3月をもって生産終了となりました。