トヨタのEセグメントセダン「MIRAI」は、世界初の量販型水素電池自動車として、2014年12月に発売が開始されました。先進的な機構を持つ車種ながら、既存のEVやハイブリッド車と比べても遜色ない程の高い完成度を持つと共に、極めて個性的な内外装のデザインを備えるなど、強い存在感を放つモデルとなっています。
文字通り未来的な内外装デザイン
ボディ形状は4ドアセダンで、乗車定員は4人となっています。スタイリングは、左右のグリルを強調しキーンルックを更に発展させたようなフロントマスクや、水滴をモチーフとした流麗なサイドビュー、台形をかたどったテールエンドなど、全身が個性の塊のようなデザイン処理が施され、車名に相応しい未来的な雰囲気を醸すものとなっています。
ボディサイズは全長4,890mm×全幅1,815mm×全高1,535mm、ホイールベースは2,780mmで、同社の車種の中では「カムリ」に近いサイズとなっています。一方、車両重量はそれよりも300kg程重い1,850kgとなっています。サスペンション形式は、コンベンショナルな前:ストラット式/後:トーションビーム式で、ブレーキはフロントがベンチレーテッド型の4輪ディスク式となっています。
インテリアは、エクステリア同様未来的な雰囲気に溢れるもので、インパネは左右非対称の曲線的なデザインが採用され、センター上部に液晶表示によるグラフィックメーターやマルチインフォメーションディスプレイが備わります。又、運転席・助手席は電動ランバーサポート機能を備える8ウェイパワーシートとなっています。
排出されるのは水のみ
水素と酸素を化学反応させる部分であるFCスタックは自社製で、かつて官庁向けにリースされていた燃料電池車「FCHV-adv」のそれと比べ2倍以上の出力密度を持ち、155psの最高出力を発生します。このFCスタックにより発電された電力で駆動するモーターは、最高出力154ps、最大トルク34.2kgmのスペックを持ち、最高速度175km/hの動力性能を発揮します。
変速機は存在せず駆動軸直結式で、駆動方式はFFとなります。航続距離は約650kmでEVよりも遥かに長く、水素充填時間は僅か3分でガソリン/ハイブリッド車並みであるなど、実用性はEVを遥かに凌ぐものとなっています。又、排出されるのは水のみで、CO2や有害物質を全く排出しない環境性能の高さは、ハイブリッド車より遥かに勝ります。
充実した安全装備の他、給電機能も装備
装備面では、ミリ波レーダーによる衝突被害軽減ブレーキ「プリクラッシュセーフティーシステム」や車線逸脱警報システム「レーンディパーチャーアラート」、車線変更をアシストする「ブラインドスポットモニター」を備えます。又、FCスタックにより発電された電力を家屋に供給する機能も備え、災害などによる停電時において大きな威力を発揮します。
MIRAIは次世代自動車でありながら、動力性能やドライバビリティー、操縦安定性などが高次元でバランスした完成度の高いモデルとなっています。又、価格はおよそ720万円であるものの補助金制度の利用により実質500万円程で購入出来る事も相まって、メーカーの予想(メーカー目標は発売からの1年で400台)を超える人気(発売からおよそ1カ月の受注台数が約1,500台)を得ています。
MIRAIの現時点での最大の弱点は、水素ステーションの数が20箇所程(2015年3月時点)と限られる事です。水素ステーションの設置は、経済産業省が設置基準の規制緩和を打ち出していたり、石油元売りのJX日鉱日石エネルギーが水素ステーション設置に動き出すなど、今後の展開が期待される所です。