1986年に小型車「アウディ・80」をフルモデルチェンジにより3代目B3系に移行させたアウディAGは、翌1987年にその上級車種「アウディ・90」にもフルモデルチェンジを施し2代目B3系に移行させました。先代同様プラットフォームやボディは基本的に80と共通で、専用のフロント/リア廻りの意匠や大排気量エンジンの採用により差別化を図る手法も踏襲されました。
エンジンは2L/2.2L/2.3Lの3種類を用意
ボディタイプは先代及び80同様4ドアセダンのみの設定で、ジウジアーロの手を離れ社内デザインセンターによりデザインされたエクステリアは、先代よりも流麗なフォルムに変貌すると共にCd値0.31の空力特性を実現しました(※80はCd値0.29)。又、先代同様フォグランプ一体型ヘッドランプや大型リアコンビネーションランプを採用、80との差別化が図られました。
ボディサイズは80と共通の全長4,404mm×全幅1,695mm×全高1,397mmで、先代からは僅かに拡大された一方、ホイールベースは同一の2,540mmを踏襲しました。駆動方式は80同様にFFとフルタイム4WDの「クワトロ・システム」が設定されると共に、同じく後者はセンターデフがベベルギアからトルセンデフに変更されました。
エンジンは当初、キャタライザー(触媒)付きの2L直4SOHC(最高出力115ps/最大トルク17.5kgm)と、先代からキャリオーバーされたキャタライザー無しの2.2L直5SOHC(最高出力136ps/最大トルク19kgm)、そしてその拡大版となるキャタライザー付き2.3L直5SOHC(最高出力134ps/最大トルク19.4kgm)のガソリン3種類が用意されました。
その他に、2Lを超える排気量に過大な税金が課せられるイタリア市場専用として、キャタライザー付き2L直4 20V仕様 (最高出力160ps/最大トルク19.4kgm)も用意されました。こうしたエンジン・ラインナップは、1.4L/1.6L/1.8L/1.9Lの直4ガソリンと1.6L NA及びターボの直4ディーゼルが用意された80とは全く異なっていました。又、トランスミッションは当初5速MTのみの設定でした。
高性能モデルを追加
サスペンション形式は80と共通で、フロントは全車にマクファーソンストラット式が、リアはFF車にはトレーリングアーム式が、クワトロ系にはストラット式が採用されました。その他、安全装備面では、80同様に衝突時にステアリングコラムの収縮とシートベルトの巻き上げ動作を行う「プロコン-テン」と呼ばれる同社独自のシステムが採用されました。
そして翌1988年、2.3L直5DOHC 20V仕様エンジン(最高出力170ps/最大トルク22.4kgm)を搭載し、最高速度225km/hの性能を持つ高性能モデル「クワトロ20V」が追加されました。日本市場においては、1988年にまず2.3Lエンジン搭載のFFモデル「2.3Eシュポルト」の導入が開始され、翌1989年に3速トルコン式AT仕様の「2.3E」が、更に1990年にクワトロ20Vが追加されました。
そして1991年秋に80がフルモデルチェンジを受け4代目B4系に移行すると、欧州及び日本ではそれに統合される形で90は廃止されました。一方で北米市場においては、3代目まで「4000」の車名で販売されていた80が、4代目では90に車名変更された上で販売されました。