ゼネラルモーターズ(GM)は1986年、キャデラック・ブランドより2ドア・2シーター仕様の高級コンバーチブル「アランテ」を発売しました。イタリアのデザイン会社であるカロッツェリア・ピニンファリーナの手による端正なエクステリアが特徴で、当初用意されたデタッチャブル・ハードトップ仕様のほか、追ってソフトトップ仕様車もラインナップに加えられました。
FF方式を採用
生産プロセスは、アメリカ国内のGMの工場で製造されたプラットフォームをイタリアのピニンファリーナ社に空輸し、ピニンファリーナ社がボディと内装を架装する方式が取られました。そのスタイリングは、いかにもピニンファリーナの作品らしい直線基調のプレーンなフォルムを備えていました。また、空力特性にも優れCd値は0.34を実現していました。
ボディ・ディメンションは全長4,536mm×全幅1,864mm×全高1,321mm、ホイールベース2,525mmで、競合モデルであった「メルセデス・ベンツ・SL」と比較すると、よりワイドに設定された全幅をのぞき類似したディメンションでした。駆動方式はFRを採用するメルセデス・ベンツ・SLに対し、FFが採用されました。
パワートレインは、当初4.1L V8OHV(最高出力172ps/最大トルク31.8kgm)と4速トルコン式ATの組み合わせが搭載されました。パフォーマンスは最高速度が192km/h、0-60mph加速タイムが9.3sでした。サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式、リアがストラットHアーム式で、ステアリング形式はラック&ピニオン式でした。
また、ブレーキはフロントがベンチレーテッド型、リアがソリッド型の4輪ディスク式が装備され、タイヤは前後ともにP225/55VR16サイズが装着されました。また、安全装備としてSRS運転席エアバッグシステムやABSなどが、快適・豪華装備としてレザー&パワーシートやクルーズコントロールなどが採用されました。
エンジンを強化
その後1988年モデルから、それまでのデジタルメーターに加えアナログメーターの選択が可能になりました。次いで1989年モデルでは、エンジンが4.5L V8OHV(最高出力203ps/最大トルク37.3kgm)に置換されると同時に、速度感応型の可変ダンピングシステムやバリアブル・ステアリングが採用されました。
続いて1990年モデルから廉価版となるソフトトップ仕様が追加されるとともに、トラクションコントロールが装備されました。次いで1991年モデルでインパネの意匠が変更され、1992年モデルではエンジンが4.6L V8DOHC(最高出力294ps)に置換され、パフォーマンスが最高速度233km/h・0-60mph加速6.7sまで向上しました。
そして1993年7月をもって生産を終了、同ブランドの2シーター・コンバーチブルは10年後の「XLR」のリリースまで途絶えることととなりました。