ゼネラルモーターズ(GM)は1996年、「キャデラック」ブランドから同ブランドのボトムレンジに位置する中型セダン「カテラ」を発売しました。同クラスのヨーロッパ車に対抗するため企画されたモデルで、かつて同じ意図でリリースされた自社設計による「シマロン」が商業的に失敗に終わった経験から、傘下にあったオペルの2代目「オメガ」に手直しを加えて販売する手法が取られました。
独自のフロントマスクを採用
「GM Vプラットフォーム」に架装されるボディのバリエーションは、ステーションワゴンも用意された本家のオメガと異なり、4ドアセダンのみのラインナップでした。ボディシェルは基本的にオメガ・セダンと共通であったものの、フロントグリルなどにキャデラック・ブランド独自の意匠が与えられるとともに、バンパーにオーバーライダーが装着されました。
ボディ・ディメンションは全長4,923mm×全幅1,786mm×全高1,458mm、ホイールベース2,728mmで、バンパーの相違によりオメガから全長が延長されていたものの、同時代のキャデラック車の中では最小でした。車両重量は1,755kgで、オメガの同一エンジン搭載モデルと比較すると80kgほど重くなっていました。
パワートレインは一種類
駆動方式はFRで、エンジンはオメガに用意されていた中で最も排気量の大きい3L V6DOHCボッシュ・モトロニック燃料噴射仕様(最高出力203ps/最大トルク26.5kgm)が搭載されました。組み合わせられるトランスミッションは4速トルコン式ATで、最高速度204km/h・0-60mph加速8.9sの動力性能を備えていました。
サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式で、ブレーキはフロントがベンチレーテッド型の4輪ディスク式が装備されました。また、ステアリング形式はリサーキュレーティング・ボール式でした。一方、安全装備面ではSRSデュアルエアバッグシステムやABS、トラクションコントロールなどが標準装備されました。
充実の装備
快適・豪華装備面では、全車にアルミホイール、レザー・インテリア、シートヒーター、デュアルゾーン・エアコン、ボーズ・プレミアムサウンドシステム、電動サンルーフなどが標準装備されました。さらにスポーティグレードには、前後のスポイラーやチューンド・サスペンション、大径ホイールに加え、8ウェイ・パワーシートやHIDヘッドランプなどが追加装備されました。
その後2000年にマイナーチェンジが実施され、内外装デザインの変更やサスペンションの改良などが行われました。そして翌2001年をもって生産を終了、後継モデルはすぐにはリリースされなかったものの、翌2002年にGMオリジナル設計によるニューモデル「CTS」が登場しました。
カテラは、車格面で伝統的なキャデラック車ユーザーへの訴求力に欠けた上、ブランド力に劣るオペル車がベースであったことも災いし、商業的に十分な成功を収めることができませんでした。