ゼネラルモーターズ(GM)は2012年、キャデラック・ブランドよりDセグメントの新型乗用車「ATS」を発売しました。「CTS」の弟分にあたる同ブランドのボトムレンジ・モデルで、「メルセデス・ベンツ・Cクラス」や「BMW・3シリーズ」などのライバルに対抗すべく、ドイツのニュルブルリンク・サーキットを走り込んで走行性能を磨いたことが特徴でした。
CTS譲りのスタイリング
プラットフォームはCTSと共通の「GMアルファプラットフォーム」で、ボディを含め随所に軽量化対策が施されました。ボディタイプは当初4ドアセダンのみの設定で、エクステリア・デザインはCTSなどと同様、「アート&サイエンス」のテーマに基づいたエッジの効いたシャープな造形が採用されました。また、フロントグリルやヘッドランプの意匠などもCTS譲りのものでした。
ボディサイズは全長4,643mm×全幅1,821mm×全高1,420mmで、CTSよりも一回り小さく、ホイールベースも100mm以上短い2,776mmに設定されました。サスペンション形式は、CTS同様のフロント:マクファーソンストラット式/リア:マルチリンク式が踏襲されたほか、同じく電子制御可変ダンピングシステムの「マグネティック・ライド・コントロール」も採用されました。
50:50の前後重量配分
駆動方式はCTS同様にFRとフルタイム4WDが設定されたほか、50:50の前後重量配分も継承されました。エンジンは当初、2L直4DOHCターボ(最高出力276ps/最大トルク36kgm)、2.5L V6DOHC NA(最高出力205ps/最大トルク26.4kgm)、3.6L V6DOHC NA(最高出力325ps/最大トルク38kgm)の3種類が用意されました。組み合わせられるトランスミッションは、6速MTまたは6速トルコン式ATでした。
また、ブレーキは4輪ベンチレーテッド・ディスク式が装備されました。一方、予防安全装備面では、衝突被害軽減ブレーキの「オートマチック・ブレーキ」や全車速追従機能付きの「アダプティブ・クルーズ・コントロール」、衝突の危険性を察知するとシートに振動を与えドライバーに警告する「セーフティー・アラート・ドライバーシート」といった同社最新のシステムが採用されました。
クーペや高性能版を追加
また、インテリア面では8インチマルチタッチディスプレイ採用のインフォテインメントシステム「CUE」が用意されました。その後2014年に2ドアクーペ版の「ATSクーペ」が追加され、追って同年11月に開催されたロサンゼルス・オートショーでは、3.6L V6DOHCツインターボエンジン(最高出力466ps/最大トルク61.5kgm)+8速トルコン式ATを搭載するハイパフォーマンス版「ATS-V」「ATS-Vクーペ」が発表されました。
次いで2015年には3.6L V6 NAエンジンがリニューアルされ、アウトプットが最高出力340ps/最大トルク39.4kgmに向上しました。同時に、トランスミッションが全車8速トルコン式ATに統一されました。日本市場においては、2013年3月にまずセダンの2Lエンジン+6速AT仕様車が導入され、2015年3月に同じパワートレインを搭載するATSクーペが追加されました。