ダイムラー・ベンツは1963年のフランクフルト・ショーにおいて、同社のラインナップの頂点に位置し、戦前ごく少数が生産された「グローサー・メルセデス」の再来ともいえるショーファードリブン「メルセデス・ベンツ600」(W100型)を発表しました。巨大なボディに時代の先端を行く快適・豪華装備が備わり、基本設計に変更のないまま18年に渡り生産が続けられました。
3タイプのボディを用意
ボディタイプは、ショートホイールベース4ドア仕様の「リムジーネ」とロングホイールベース4ドア/6ドア仕様の「プルマン」、そしてプルマンをベースにしたオープンモデル「ランドーレット」の3タイプが用意されました。スタイリングは、デコレーションを排した直線基調のプレーンなフォルムと、同社独自の縦型ヘッドランプが特徴でした。
室内は、リムジーネが2列シート5人又は6人乗り仕様、プルマン/ランドーレットが3列シート7人又は8人乗り仕様でした。ボディのディメンションは、リムジーネでも全長5,540mm×全幅1,950mm×全高1,500mm、ホイールベース3,200mmという巨大なもので、プルマンは更にそれよりも全長/ホイールベースが700mm長い堂々たる体躯を誇りました。
車両重量もボディサイズに比例して重量級で、リムジーネで2,475kg、プルマンでは2,630~2,710kgに達しました。サスペンション形式は、下位モデルの「メルセデス・ベンツ・300」などと共通のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:スウィングアクスル式ながら、スプリングはコイル式に代わり先進的なエア式(エアサスペンション)が採用されました。
最高速度200キロオーバーの高性能
駆動方式は同社の他のモデルと同様FRで、エンジンはこのモデルの為に新開発された6.3L V8SOHC・ボッシュ機械式燃料噴射仕様(最高出力250ps/最大トルク51kgm)が搭載されました。トランスミッションは4速トルコン式ATが組み合わせられ、最高速度はリムジーネで205km/h、プルマンでも200km/hに達する高性能を発揮しました。
ブレーキは4輪ディスク式で、タイヤは9.00×15というファットなサイズが装着されました。又、リサーキュレーティング・ボール式のステアリングには、パワーアシストが採用されました。快適装備としては、油圧バキューム式によるパワーウィンドウ、集中ドアロック、オートクローザー付ドア、自動開閉式トランクリッド、パワーシート、サンルーフの他、前後席独立式のエアコンが採用されました。
販売は1981年6月まで継続され、その間にリムジーネが2,190台、プルマンが428台生産されました。