マセラティは1965年のトリノ・ショーで、前年に生産終了となった2ドア・グランツーリスモ「5000GT」の後を継ぐ2つのニューモデルを発表、その内の一つが2シーター・スーパースポーツ「ギブリ」でした。時代の先端を行くスタイリングと世界トップレベルの高性能を備え、商業的にも成功を収めました。
デザインはジウジアーロが担当
エクステリア・デザインは、当時カロッツェリア・ギアに所属していたジョルジェット・ジウジアーロにより手掛けられました。同時にデビューしたヴィニアーレのデザインによる2+2グランツーリスモ「メキシコ」がエレガントなノッチバックボディを採用していたのとは対照的に、ギブリはファーストバックのボディ形状とリトラクタブルヘッドランプによる低いノーズなど流麗なフォルムを備えていました。
ボディサイズは全長4,690mm×全幅1,800mm×全高1,160mmで、メキシコよりも短くワイドで、そして遥かに低いディメンションが特徴でした。又、ホイールベースは90mm短い2,550mmに設定され、車両重量は300kg軽い1,300kgでした。サスペション形式は、5000GTやメキシコなどと同様のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:リジッド・リーフ式で、4輪ディスク式のブレーキやリサーキュレーティング・ボール式のステアリング形式も同一でした。
ホイール&タイヤは7.50×15ホイールと205VR15タイヤの組み合わせで、タイヤサイズはメキシコと共通ながらホイールがワイド化されていました。駆動方式は同様にFRで、エンジンは基本的に共通の4.7L V8DOHCながら4基のウェーバーキャブレターはより大径の40DCNLが装着されるなど、更にハイチューンな仕様となっていました。
フェラーリ車を凌ぐ性能
スペックは、最高出力はメキシコより36ps高い330ps/5,500rpmで、最大トルクはほぼ同等の40kgm/4,000rpmでした。標準装備となる5速MTを介してのパフォーマンスは最高速度265km/h・0-60mph加速6.8sで、最高速度はメキシコやライバルであった「フェラーリ・275GTB/4」の256km/hを凌ぐものでした。尚、オプションで3速トルコン式ATも設定されていました。
そして1969年にオープンボディの「スパイダー」が追加され、更に翌1970年には排気量を4.9Lに拡大したV8ユニットを搭載する「ギブリSS」が発表されました。キャブレターはウェーバー40DCNFに換装され、同じ8.5:1の圧縮比から最高出力335ps/5,500rpm・最大トルク49kgm/4,000rpmのアウトプットを発生しました。
5速MTを介してのパフォーマンスは最高速度280km/h・0-60mph加速6sで、車両重量が50kg増加したにも関わらず更に向上していました。ギブリの生産は、後継モデルの「カムシン」が登場する前年の1973年まで続けられました。生産台数はクーペが1,149台、スパイダーが125台の総計1,274台で、僅か250台の生産に終わったメキシコを遥かに凌ぐヒット作となりました。