トヨタ ヴィッツ 3代目の特徴
トヨタのグローバルコンパクトカー「ヴィッツ」は、2010年12月に5年ぶり2度目のフルモデルチェンジを実施し、現行型となりました。今回のモデルチェンジでは、デザインの方向性がやや変化し、燃費性能が一段と向上した事が特徴となりました。更に、後のビッグマイナーチェンジにより走行性能が大幅に改善されました。
ボディを軽量化し、1.3Lに新エンジンを採用
スタイリングは、初代モデルからのウェッジシェイプのシルエットを踏襲しつつ、よりシャープで精悍なイメージへと変貌しました。ボディサイズは、全長3,885mm×全幅1,695mm×全高1,500mm~1,530mmで、先代よりも全長が拡大されたものの、全幅は5ナンバーサイズが踏襲されました。ホイールベースは、先代より50mm長い2,510mmとなりました。
車両重量は970kg~1,090kgで、ボディの拡大にも関わらず先代よりも若干軽量化されました。サスペンション形式は、先代同様の前ストラット式/後トーションビーム式が踏襲されました。搭載されるエンジンは、1.3L車が新開発の1NR-FE型(最高出力95ps/最大トルク12.3kgm)に変更され、FFと4WD両モデルに搭載されました。
又、同エンジンを搭載するFF車には、改良型のアイドリングストップ機能が備わる「スマートストップパッケージ」が用意され、先代を上回る26.5km/Lの低燃費を実現しました。1Lと1.5Lは先代と同じ型式のエンジンで、最高出力及び最大トルクが変更され、前者が69ps/9.4kgm、後者が109ps/14.1kgmと僅かながら低下しました。
トランスミッションは、1.5Lのスポーティグレード「RS」が5速MTも選択出来る事を除き、全てCVTに統一されました。インテリア面では、室内長を拡大し居住性を高めた他、初代から続いたセンターメーターを止め、メーター位置がオーソドックスなステアリング正面に変わりました。
高性能モデルの追加とビッグマイナーチェンジ
2010年10月に、トヨタ自身の手によるスポーツコンバージョンモデル「G’s」が追加されました。エンジンはRSと同一の1NZ-FE型ながら、専用の内外装を備える高剛性ボディや、強化サスペンション、大径アルミホイールの採用などにより、RSを凌ぐ高い走行性能を実現した事が特徴でした。
2013年9月には、「GAZOO Racing」の手によるスポーツコンバージョンモデル「GRMNターボ」が、200台限定で発売されました。輸出用の3ドアボディをベースに剛性を強化すると共にエアロパーツを追加し、更にサスペンションやブレーキも強化されていました。エンジンは、1NZ-FE型にターボチャージャーを装備し、最高出力152ps/最大トルク21kgmのスペックを発揮しました。車両重量は1,070kgで、パワーウエイトレシオは約7kg/psの数値でした。
次いで2014年4月にビッグマイナーチェンジを実施し、フロントマスクが近年のトヨタ車のアイデンティティーとなっている「キーンルック」となり、大きくイメージを変えました。又、ボディ剛性を強化すると共に、操縦安定性も大幅に改善され、事実上フルモデルチェンジに近い改良となりました。同時に、1.3Lエンジンがアトキンソンサイクル採用の1NR-FKE型(最高出力99ps/最大トルク12.3kgm)に変更され、燃費性能が向上しました。
現行型ヴィッツは、発売翌年に登場した同じセグメントのハイブリッド車「アクア」にユーザーを奪われた為販売台数が減少し、初代や先代モデルほどの大ヒットには至りませんでした。しかし、このセグメントの純ガソリン車としては、他社の競合車種を上回る人気モデルとなっています。
トヨタ ヴィッツの歴史
トヨタのBセグメント・コンパクトカー「ヴィッツ」は、1999年1月に、事実上「スターレット」の後を継ぐモデルとして登場しました。コンサバな他のトヨタ製コンパクトカーとは異なる個性的なスタイリングと、優れたトータルバランスにより、国内外でベストセラーとなりました。車名は、ドイツ語で「才気・機知」を意味する「WITZ」から取られました。
個性的なスタイリングの初代:L600/610S (’95-’98)
初代モデルのボディは3ドア及び5ドアのハッチバックで、スターレットよりも全長が短く全幅が広いモダンなディメンションを備えていました。エクステリア・デザインは、ギリシャ人デザイナーの手によるもので、それまでの国産コンパクトカーにはなかった彫刻的な造形美とエキゾチックな雰囲気を備えていました。
駆動方式はコンベンショナルなFFで、程なくしてフルタイム4WDが追加されました。エンジンは、発売当初1Lのみでのスタートとなりましたが、程なく1.3Lと1.5Lが相次いで加わりバリエーションを拡大しました。パワートレインや足回りなど、メカニズム上は際立った特徴はなく、トヨタらしい堅実な設計手法が取られていました。
インテリア面では、当時のコンパクトカーでは珍しかったセンターメーター式のダッシュボードが特徴で、2度目のフルモデルチェンジが実施されるまでの間、ヴィッツのアイデンティティーとなりました。又、パッケージングにも妥協はなく、5人の大人が無理なく乗車出来る居住性が確保されていました。
キープコンセプトの2代目:KSP/SCP/NCP9♯ (’05-’10)
2005年にフルモデルチェンジを実施し2代目となった際も、スタイリングやインテリアはキープコンセプトが貫かれ、初代のイメージを色濃く受け継いでいました。しかし、プラットフォームを一新すると共にボディは一回り拡大され、居住性と衝突安全性が向上するなど、確実な進化を遂げていました。又、国内向けモデルは、5ドアのみの設定となりました。
2010年に2度目のフルモデルチェンジを実施し、現行型となった際は、ボディが更に一回り拡大され居住性の向上が図られました。その一方で、全幅は日本の5ナンバーサイズが踏襲され、最小回転半径もほぼ維持されるなど、取り回し性能は維持されました。又、スタイリングは先代のイメージを踏襲しつつ、よりアグレッシブに変貌すると共に、空力特性も改善されました。
インテリア面での特徴は、これまでのセンターメーターを廃止し、オーソドックスなレイアウトに変更された事でした。パワートレイン関係では、1.3Lエンジンが刷新され燃費性能が向上すると共に、従来トルコン式ATが採用されていた4WDモデルがCVT化され、オートマチック車は全てCVTに統一されました。それによって、モデル全体としての燃費性能も嵩上げされました。
2014年にビッグマイナーチェンジが行われ、フェイスリフトと共にボディ剛性や操縦安定性の改善が図られ、総合性能が大きく向上しました。又、1L/1.3L/1.5L全てのエンジンに改良の手が加えられ、燃費性能が一段と向上した事もトピックでした。
ヴィッツは、発売以来長らくベストセラー街道を驀進し続けましたが、2011年にハイブリッド車「アクア」が発売されてからは、国内においてはベストセラー・コンパクトカーの座を譲りました。しかし、価格的なメリットと強力な販売網を武器に、現在も純ガソリン車としては好調な販売を維持しています。