フィアット傘下において設計開発を行っていたマセラティは、1997年にフィアットの意向により同じグループ企業であるフェラーリの指揮下に置かれる事となりました。そうした新体制の元で初めて開発されたモデルが、1998年のパリ・サロンで発表された高級2ドアクーペ「3200GT」でした。それまでのモデルからプラットフォームやスタイリングが一新された、新生マセラティに相応しいモデルでした。
デザインはジウジアーロが担当
エクステリア・デザインは、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインにより行われ、流麗かつクラシカルな雰囲気を醸すスタイリングは、それまでのマセラティ製グランツーリスモとは全く異なるものでした。殊にLEDランプを用いたリアコンビネーションランプは、ブーメラン形のユニークな意匠を持っていました。又、空力特性にも配慮され、Cd値は0.34を実現していました。
ボディサイズは全長4,510mm×全幅1,820mm×全高1,305mmで、2年前に生産終了となったスポーツクーペ「シャマル」よりも全長が400mm以上拡大されていました。ホイールベースは2,660mmでシャマルよりも260mm長く、車両重量も大幅に増加し1,590kgとなっていました。サスペンション形式は、1990年に生産を終了した「ロワイヤル」以来となる4輪ダブルウィッシュボーン式が採用されました。
エンジンはシャマル用をキャリオーバー
駆動方式はマセラティ伝統ともいえるFRが踏襲され、エンジンはシャマルからキャリオーバーされた空冷インタークーラー付きツインターボチャージャー仕様の3.2L V8DOHC32バルブが搭載されました。但し、圧縮比を7.5:1から8.0:1に高めるなどの改良が行われ、最高出力は45psアップの370ps/6,250rpm、最大トルクは5.5kgmアップの50kgm/4,500rpmを発生しました。
トランスミッションはシャマルと同様6速MTが組み合わせられ、最高速度はシャマルの10km/h増しとなる280km/hに向上した他、0-100km/h加速は0.2s短縮され5.1sとなりました。又、ホイール&タイヤは、フロント:8.0J×18+235/40ZR18/リア:9.5J×18+265/35ZR18という大径かつワイドなサイズが装着されました。そして翌1999年には、電子制御4速トルコン式ATが選択出来るようになりました。
日本市場には1998年11月からベースグレードの販売が開始され、2001年8月にドライビング・プレジャーを高めた上級グレード「アセットコルサ」が導入されました。3200GTは意欲作であったものの、LEDリアコンビネーションランプの光量不足から北米市場への投入が出来ない問題があった為、2001年中に早くも後継モデル「マセラティ・クーペ」にバトンタッチして生産終了となりました。