フォルクスワーゲンは1961年9月、基本設計を戦前まで遡る大衆車「タイプ1(通称ビートル)」に取って代わるモデルとして、「タイプ3(モデル名1500)」をリリースしました。スタイリングが大幅にモダナイズされた他、タイプ1の欠点であった居住性やラゲッジスペースの問題も改善されていました。しかし、市場ではタイプ1を超える人気を獲得出来ず、それよりも早く生産終了となりました。
タイプ1からボディ形状を一新
まず最初に登場したのは3ボックス型の2ドアセダンで、円弧状のボディシェルと独立した前後フェンダーを持つタイプ1とは対照的な、ボクシーなフラッシュサイド型フルワイズボディを備えていました。ボディサイズは全長4,225mm×全幅1,605mm×全高1,475mmで、タイプ1に対し全長が195mm、全幅が65mm大きく、全高は25mm低いディメンションでした。
ホイールベースは同一の2,400mmで、車両重量は100kg以上重い880kgとなっていました。サスペンション形式は、タイプ1と共通のフロント:トレーリングアーム/トーションバー式・リア:スウィングアーム/トーションバー式で、駆動方式もRRが踏襲されました。エンジンはタイプ1譲りの空冷水平対向4気筒OHVながら、レイアウト変更により小型化が図られていました。
排気量は当初1.5Lで、最高出力45ps/最大トルク10.8kgmのアウトプット発生、トランスミッションは4速MTが組み合わせられ、最高速度125km/hの性能を発揮しました。その他、4輪ドラム式のブレーキやウォーム&ローラー式のステアリング形式などはタイプ1と共通で、ホイール&タイヤは同一の15インチ径ながら、よりワイドな物が装着されました。
ボディバリエーションを追加
ユーティリティ面では、リアフードに搭載されるエンジンをトレイで覆う事でその上部にラゲッジスペースが確保され、フロントフード内のラゲッジスペースと相まってフロントエンジン車に遜色ない荷物積載量を実現していました。そして翌1962年1月、2ボックス型3ドアのワゴン「1500ヴァリアント」が追加されました。
次いで1963年8月、エンジンをツインキャブレター化し最高出力を54psに高めた「1500S」が追加されました。続いて1965年8月には、エンジンを1.6Lシングルキャブレター仕様(最高出力54ps/最大トルク11.2kgm)に置換すると共に、前輪ブレーキをディスク化した「1600」に置き換えられました。同時に、セダンのボディ後半部分をファストバック化した「1600TL」が追加されました。
次いで1968年6月、量販車世界初の電子燃料噴射装置を採用した1.6Lエンジン(最高出力65ps)を搭載する「1600LE」「1600TLE」が追加されると同時に、3速フルATが設定されました。続いて1970年のフェイスリフトでボンネットを120mm延長、ラゲッジスペースが拡大されました。そして1973年、FF方式+水冷エンジン採用の後継モデル「パサート」が登場すると共に、生産終了となりました。