フィアットは1961年4月、1955年にリリースした「1200グランルーチェ」に代わる小型乗用車「1300/1500」を発売しました。一クラス下の「1100」と上級車種「1800」の間を埋めるモデルと位置付けられ、冒険を避けた手堅い設計が行われた一方で、フロントにディスクブレーキが採用されるなど先進的な一面もありました。
セダンとワゴンを用意
ボディタイプは4ドアセダンの「ベルリーナ」と5ドアステーションワゴンの「ファミリアーレ」が用意され、そのスタイリングは丸みを帯びた古典的な1200グランルーチェから一転、直線基調のプレーンなフォルムが採用されました。ボディサイズは全長4,030mm×全幅1,545mm×全高1,420mmで、1100と1800の中間程度の大きさでした。
ホイールベースは1100より80mm長い2,420mmで、車両重量はベルリーナが960kg、ファミリアーレが1,010kgでした。駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、エンジンは1300には水冷1.3L直4OHVシングルキャブレター仕様(最高出力65ps/最大トルク9.5kgm)が、1500には水冷1.5L直4OHVシングルキャブレター仕様(最高出力73ps/最大トルク10.8kgm)が搭載されました。
トランスミッションは共に4速MTとの組み合わせで、それを介しての最高速度は1300が129km/h、1500が150km/hでした。サスペンション形式は、1100や1200グランルーチェと同様のフロント:ダブルウィッシュボーン+コイル式/リア:リジッド・リーフ式が採用され、ステアリング形式はウォーム&セクター式からウォーム&ローラー式に変更されました。
アバルト仕様も登場
又、ホイール&タイヤは4.5J×13インチホイールと5.60S13タイヤの組み合わせでした。そして翌1962年、小型車のチューニングで定評のあるアバルト社の手により、コンプリートカー「フィアット・1500Sベルリーナ・アバルト」がリリースされました。1.5Lエンジンの圧縮比を8.8:1から9.5:1に高めると共に、ウェーバー・ツインキャブレターが装着されました。
それにより最高出力は110psまで高められ、最高速度は180km/hに達しました。その後、1964年に1500が仕様変更を受け、85mm長いホイールベースを持つ「1500C」に移行しました。同時に、エンジンのアウトプットが最高出力75ps/最大トルク11.8kgmに向上、それに伴い最高速度は5km/hアップの155km/hとなりました。
そして1966年、1300が後継モデル「124」にバトンを渡し一足先に生産を終了、翌1967年には124の上級モデル「125」が登場し、1500も生産終了となりました。フィアット1300/1500は、イタリア本国での生産のみならず、ユーゴスラビアのサスタバ社によるラインセンス生産も行われました。その他、派生モデルとしてピニンファリーナのデザインによるクーペやコンバーチブルも存在しました。