日産の3ドアスペシャリティカー「180SX」は、1989年3月、前年にフルモデルチェンジした2ドアスペシャリティカー「シルビア(5代目 S13)」のハッチバック版としてデビューしました。シルビアの北米向けモデルである「240SX」をベースに国内向けに仕様変更したモデルで、本家のシルビアがS14に切り替えられた後も生産が続けられるロングセラーとなりました。
空力ボディとターボエンジンの組み合わせ
スタイリングはノッチバックのシルビアに対しファストバックで、リアにテールゲートが備わる他、リトラクタブルヘッドランプ採用によるスマートなフロントマスクによりCd値0.3を実現していました。ボディサイズは全長4,540mm×全幅1,690mm×全高1,290mm、ホイールベースは2,475mmで、全長がシルビアより70mm拡大された以外は同一のスペックでした。
前:ストラット式/後マルチリンク式のサスペンションも共通で、車両重量は同一仕様のシルビアに対し50kg重い1,170kg~1,210kgでした。駆動方式はシルビア同様FRで、パワートレインもシルビアと共通の1.8L直4DOHCエンジンと5速MT及び4速トルコン式ATの組み合わせでした。しかし、シルビアと異なりNAエンジンは設定されず、CA18DET型ターボエンジンのみの設定でした。
スペックは最高出力175ps/6,400rpm、最大トルク23kgm/4,000rpmで、同エンジン搭載のシルビアと同一でした。インテリアは、インパネのデザインを含めシルビアと共通で、ステアリングのみ異なるデザインのものが採用されました。グレード体系は標準の「タイプⅠ」と上級の「タイプⅡ」の2種類で、タイプⅡには4輪操舵システム「HICAS-Ⅱ」装備車が設定されました。
日産 180SXのCM(初期)
日産 180SXのCM(中期、後期)
M/Cで排気量を拡大しNA車も追加
1991年1月にシルビアと共にマイナーチェンジを実施し、フェイスリフトが行われた他、エンジンが2L直4DOHCターボのSR20DET型に置換されました。それに伴い、スペックは最高出力205ps/6,000rpm、最大トルク28kgm/4,000rpmへと大きく向上しました。その一方で燃費が低下した他、車両重量が20kg増加しました。そして1994年1月に、グレード名が「タイプR」及び「タイプX」に変わりました。
1996年8月にビッグマイナーチェンジを実施し、フロントバンパーやリアコンビネーションランプのデザイン変更、大型テールウイングの追加などの外装変更が行われた他、2L直4DOHC NAのSR20DE型エンジン(最高出力140ps/6,400rpm、最大トルク18.2kgm/4,800rpm)を搭載するエントリーグレード「タイプS」が新設定されました。
180SXは、ベストセラーカーとなったS13型シルビアとの併売期間中はやや影に隠れた存在でした。しかし、1993年10月にシルビアがS14型に切り替えられた際に大きくなったボディが支持を得られず、引き締まったボディを持つ180SXに対する評価が高まり、シルビアがS15型にモデルチェンジする直前の1989年12月まで生産が継続される結果となりました。
180SXの姉妹車:5代目シルビア