国産車史上において、「マツダ・ロードペーサー(型式C-RA13S)」は知る人ぞ知る車種であり、かなりの珍車と言えます。ロードペーサーは、マツダ(当時は東洋工業)のフラッグシップセダンとして、1975年に発売されます。
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海外メーカーからボディとシャシーを調達
それまでの同社の最上級車種は「ルーチェ」でしたが、車格からするとアッパーミドルクラスになり、トヨタの「マークⅡ」や日産の「ローレル」と同クラスでした。これでは、メーカーを代表する高級車としては物足りなさが否めませんでした。
当時のマツダは、トヨタ・日産に次ぐ国内第三位の自動車メーカーであり、トヨタや日産のようなフルラインナップ体制を整えたいという願望を持っていました。しかし、新規にフラッグシップクラスのセダンを開発する程の企業体力はなかった為、海外メーカーからボディとシャシーを調達し、それに自社製ロータリーエンジンを搭載するという、型破りな手法が選択されました。
ボディ/シャシーは、オーストラリアのホールデン社製フルサイズセダン「HJ」の最上級グレード「プレミア」の物が選ばれました。オーストラリアは日本と同様左側通行である為、右ハンドル仕様がデフォルトとなるメリットがあった事も、選択の一因であったと推測出来ます。
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日本自動車博物館に展示されているマツダ ロードペーサー
「配達されない三通の手紙」に使用されたロードペーサー
トヨタ センチュリーや日産プレジデントに迫る
車体サイズは、全長4,850mm×全幅1,885mm×全高1,465mmという堂々たる体躯で、「トヨタ・センチュリー」や「日産プレジデント」に迫るものでした。そして、本来その車体に搭載されていたエンジンは、4.1L V8又は5.7L V8のレシプロエンジンでしたが、マツダ版のロードペーサーには、当時同社で最強だった1.3Lロータリーエンジン「13B型」が搭載されました。
敢えて自社製ロータリーエンジンを選択したのは、当時のマツダにとってロータリーエンジンはシンボル的存在であり、自社の車種である事をアピールする為にも換装が必須と考えたからでした。
ここで、オリジナルの4.1Lエンジンと13Bエンジンのスペックを比較すると、最高出力は前者が185ps/4,400rpm、後者が130ps/6,000rpm、最大トルクは前者が36.2kgm/2,400rpm、後者が19.0kgm/4,000rpmでした。
因みに、HJのベースグレードに搭載された3.3L直6エンジンのスペックは、最高出力135ps/4,400rpm、最大トルク26.8kmg/2,000rpmというものでした。マツダの首脳陣は、ロードペーサーの発表時にスペックの低い方の3.3Lエンジンを引き合いに出し、「僅か3分の1の排気量でほぼ同等の出力を発揮し、かつ遥かに軽量コンパクトである点は、ロータリーエンジンならではのメリット」であるとアピールし、胸を張りました。
しかし、両者を比較すると、最高出力発生回転数は13B型の方が遥かに高く、かつ最大トルクに関しては約3割も劣っていました。これは、実用域での力強さの点で13Bは遥かに劣り、ドライバビリティーが悪い事を意味します。
4年間に僅か800台足らずが生産
そもそも13B型ロータリーエンジンは、ルーチェクラスへの搭載を前提に開発されたエンジンであり、車両重量がそれより遥かに重いホールデン製フルサイズボディに搭載する事自体、無理がありました。
このように車としての基本的な成り立ちに無理があった事や、一部の輸入車ファンにしか受け入れられないようなスタイリングなどが影響し、販売は低迷しました。そして、4年間に僅か800台足らずが生産された後、静かに市場から姿を消しました。
ロータリーを搭載したマイクロバス
ロータリーを搭載したピックアップトラック
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