輸入車ディーラーのヤナセは、1990年5月にいすゞ製のスペシャリティカー「PAネロ」を発売しました。当時いすゞの親会社であったGM(ゼネラル・モーターズ)がアメリカ国内で販売していた「ジオ・ストーム」を日本国内向けに仕様変更したモデルで、GMと関係の深かったヤナセを通じ日本国内での販売を行ったものでした。
フロントまわりに独自の意匠を採用
プラットフォームやフロントまわりを除くボディシェルはいすゞの小型乗用車「ジェミニ・クーペ」(3代目)と共通で、ボディタイプはそれと同様にテールゲートが備わる3ドアハッチバッククーペでした。スタイリングは、前述のとおりフロントまわりに独自の意匠が採用され、固定式ヘッドランプに代わりセミリトラクタブルヘッドランプが備わるなど、全く異なる雰囲気を持っていました。
ボディ・ディメンションは全長4,150mm×全幅1,695mm×全高1,315mm、ホイールベース2,450mmで、ジェミニ・クーペに対しては全長が35mm短いことを除き同一のスペックでした。駆動方式は、当初はジェミニ・クーペ同様FFのみの設定で、エンジンもそれと共通の1.6L直4DOHC NAの4XE1型(最高出力140ps/最大トルク14.5kgm)が搭載されました。
トランスミッションは、ジェミニ・クーペ同様5速MTと4速トルコン式ATが設定されました。サスペンション形式はジェミニ・クーペと共通の4輪マクファーソンストラット式で、ブレーキも同様に全車にフロントがベンチテーテッド型の4輪ディスク式が採用されました。また、ステアリング形式も同じくパワーアシスト付きのラック&ピニオン式でした。
いすゞ PAネロのCM(ヤナセ)
一部改良で安全性強化とともにターボ車を追加
当初のグレード体系は標準グレード「1.6S」と上級グレード「1.6X」の2タイプで、両グレードに15インチアルミホイールやカセットプレーヤー付オーディオシステムが標準装備されたほか、1.6XにはABSがオプション設定されました。その後1991年2月の一部改良により、サイドドアビームと後席3点式シートベルトが採用されました。
同時に、4XE1型ターボチャージドエンジン(最高出力180ps/最大トルク21.2kgm)+5速MTを搭載し、フルタイム4WD方式を採用した高性能グレード「1.6イルムシャー160R 4WD」が追加されました。
また、1991年11月には3ドアクーペのみだったボディタイプに3ドアハッチバックモデルが追加となりました。
次いで1992年2月に2度目の一部改良が実施され、シートベルトウォーニングやロールオーバーバルブの採用ととともに、内装に難燃化材料が採用され安全性が向上しました。
同時に、AT車にシフトインジケーターが採用されたほか、160Sのスピーカーが2個から4個に変更されました。そしていすゞの乗用車自社生産徹底に伴い、1993年7月をもって販売終了となりました。
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