1972年に正式に「Sクラス」の名称が与えられたメルセデス・ベンツのフラッグシップモデルは、1991年に12年ぶり2度目のフルモデルチェンジを受け、通算3代目となるW140型に移行しました。ボディサイズが拡大されると共に先代を凌ぐ空力特性が追求された他、2重ドアガラスの採用など室内空間の快適性向上に力が注がれました。
リアサスペンションを一新
ボディタイプは当初、2ドアクーペが廃止され、4ドアセダン標準仕様及びロングホイールベース仕様のラインナップとなりました。スタイリング面では端正な先代から一転、スラントノーズやウェッジシェイプの採用によりアグレッシブなイメージを強めると共に、Cd値はそれまでの0.36から0.31に低減されました。
ボディサイズは全長5,120mm(標準仕様)/5,220mm(ロングホイールベース仕様)×全幅1,885mm×全高1,490mmで、全ての項目で先代から拡大されました。同時にホイールベースも延長され、標準仕様が3,040mm、ロングホイールベース仕様が3,140mmとなりました。サスペンション形式は、フロントはダブルウィッシュボーン式を踏襲する一方、リアはセミトレーリングアーム式からマルチリンク式に変更されました。
駆動方式は従来同様FRで、欧州仕様の搭載エンジン及びグレード体系は、当初3.2L直6(最高出力231ps/最大トルク31.6kgm)搭載の「300SE」、4.2L V8(最高出力286ps/最大トルク41.8kgm)搭載の「400SE」「400SEL」、5L V8(最高出力326ps/最大トルク48.9kgm)搭載の「500SE」「500SEL」、6L V12(最高出力408ps/最大トルク59.1kgm)搭載の「600SE」「600SEL」がラインナップされました。
クーペが再びラインナップに
北米市場向けに3L直6ディーゼルターボ(最高出力177ps/最大トルク33.7kgm)搭載の「300SD TURBO」も用意されました。トランスミッションは4速MTが廃止され、5速MT又は4速トルコン式ATの組み合わせとなりました。そして1993年、クーペが全面的に改良を受けた上で再びラインナップに加わりました。
ホイールベースを2,944mmに短縮したシャシーに、全長5,065mm×全幅1,910mm×全高1,445mmのディメンションと2シーターカブリオレ「SLクラス」に類似したフロントマスクが備わるボディ架装され、グレードは5L V8エンジン搭載の「500SEC」と6L V12エンジン搭載の「600SEC」がラインナップされました。
次いで1994年にグレード名の変更が行われ、セダンは300SEが「S320」に、400SE/400SELが「S420/S420L」に、500SE/500SELが「S500/S500L」に、600SE/600SELが「S600/S600L」に、クーペは500SECが「S500クーペ」に、600SECが「S600クーペ」になりました。同時に、セダンに2.8L直6エンジン(最高出力193ps/最大トルク27.5kgm)を搭載する「S280」が追加されました。
そして1998年にフルモデルチェンジが実施され、4代目W220型に移行しました。日本市場における3代目Sクラスは、まず1991年8月に300SE/500SE/500SEL/600SELの導入が開始され、翌1992年10月に400SEL/600SEが追加されました。次いで1994年8月、セダンのグレード体系がS280/S320/S500/S500L/S600Lに変更されると同時に、S500クーペ/S600クーペの導入が開始されました。
そして1998年11月に4代目モデルに切り替えられました。