かつてイギリスのコヴェントリーに存在していた自動車メーカー、デイムラーは、1959年に新型スポーツカー「SP250」を発売しました。1トンを切る軽量な車体に2.5L V8エンジンが搭載され、当時としては極めて優れた動力性能を発揮しました。販売はヨーロッパ市場のみならず、「ダーツ」の車名でアメリカ市場にも輸出されました。
個性的なスタイリング
車体構造はラダーフレームとFRPボディの組み合わせで、ボディタイプはソフトトップが備わる2ドア・コンバーチブルのみの設定でした。また、フロントシートの後部には、ミニマムなスペースながらリアシートが備わっていました。スタイリングは、両生類あるいは魚類のようなイメージのフロントマスクや、張り出した前後のフェンダーライン、小さなテールフィンなどが備わる非常に個性的なものでした。
また、前後のバンパーは標準では備わらず、オプション扱いとなっていました。この特異なデザインにより、「世界一醜い車」とも称されました。ボディサイズは全長4,077mm×全幅1,537mm×全高1,276mmで、同年代の代表的なイギリス製スポーツカーであった「MGA」と比較すると一回り大きいディメンションでした。一方、ホイールベースはそれよりも僅かに短い2,337mmに設定されていました。
車両重量は940kgで、遥かにコンパクトな1.6L直4エンジンを搭載するMGAと比較しても僅かに重いだけでした。駆動方式はコンベンショナルなFRで、フロントに搭載される2.5L V8OHVヘミヘッド・エンジンは、8.2:1の圧縮比と2基のSUキャブレターにより最高出力139ps/5,800rpm・最大トルク21.4kgm/3,600rpmのアウトプットを発生しました。
最高速度200km/hの性能を実現
最高出力の数値は、MGAを60psも上回るものでした。トランスミッションは4速MTが標準で、オプションでOD付き4速MTと3速ATが用意されました。標準の4速MT仕様は、最高速度200km/h・0-60mph11.1sのパフォーマンスを発揮しました。これは、MGAよりも最高速度で37km/h勝り、0-60mph加速タイムで3.1sも下回るものでした。
サスペンションはフロントが独立懸架/コイル式、リアがリジッド・アクスル/リーフ式で、ブレーキは4輪とも油圧式のガーリング・ディスクブレーキが奢られました。インテリアは、丸形6眼式メーターや3本スポーク式ステアリングホイールが備わるなど、いかにもスポーツカーらしいムードを持つものでした。
また、オプション装備として、エクステリア面ではハードトップやフォグランプ、ワイヤーホイール、ホワイトウォールタイヤなどが、インテリア面ではヒーターやシートベルト、チルトステアリングが用意されました。そして翌1960年にデイムラーがジャガー傘下に収まった際、チルトステアリングを標準化するなどの仕様変更を施した「Bスペック」が追加されました。
さらに1963年には、ヒーターやシガーライターなどが標準装備される「Cスペック」が追加されました。そして翌1964年に生産終了となりました。