かつてイギリスのコヴェントリーに存在していた自動車メーカー、デイムラーは、1959年10月に開催されたロンドン・ショーにおいて高級4ドアセダン「マジェスティック・メジャー」を発表、ジャガー参加に収まった翌1960年11月に生産を開始しました。1958年にデビューした「マジェスティック」の上級モデルで、より排気量の大きいエンジンを搭載することで優れた動力性能を実現していました。
古典的なスタイリングを踏襲
シャシーは1937年にリリースされた「ニューフィフテーン」で採用されたボックスセクションフレームの改良型で、弟分のマジェスティックと共通のものでした。スタイリングも基本的にマジェスティックと共通で、縦長のフロントグリルや完全にフラッシュサイド・フルワイズ化されていないボディ側面の造形など、古典的な雰囲気を醸すものでした。
ボディサイズは全長5,100mm×全幅1,873mm×全高1,594mmで、マジェスティックから全長と全幅が拡大されていました。ホイールベースは同一の2,896mmで、車両重量は50kg程重い1,854kgでした。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンはマジェスティックの3.8L直6OHVに代わり、4.6L直6OHV SUツインキャブレター仕様(最高出力223ps/5,500rpm・最大トルク39.2kgm/3,200rpm)が搭載されました。
ジャガーに迫る動力性能
当時の高性能セダンの代名詞的存在であった「ジャガー・3.8マーク2」の3.8L直6DOHCエンジンと比較すると、最高出力は同一で最大トルクは6.1kgm勝っていました。トランスミッションはボルグ・ワーナー製の3速トルコン式ATが組み合わせられ、最高速度192km/hの性能を発揮しました。
このパフォーマンスは、ジャガー・3.8マーク2の201km/hには若干及ばなかったものの、スポーツセダンを名乗るにやぶさかでないものでした。ブレーキはマジェスティック同様、ダンロップ製の4輪ディスク・ブレーキが奢られました。また、ロック・トゥ・ロック4.5回転のスローなギアレシオを持つステアリングには、当初はパワーアシストが備わっていませんでした。
その後1964年10月に、パワーステアリングが標準化されました。また、後期型はリミテッドスリップデフが採用されるとともに、ダイナモに代わりオルタネーターが装備されました。そして1968年に生産を終了、後継モデルはすぐにはリリースされず、同クラスのモデルの登場は1972年の「ダブルシックス」まで待たなければなりませんでした。
なお、派生モデルとして、1961年に全長とホイールベースを大幅に延長した8人乗りのリムジン「DR450」がリリースされました。パワートレインをはじめ基本的なメカニズムはマジェスティック・メジャーと共通で、同様に1968年まで生産されました。