フィアットは1967年、前年にリリースした小型乗用車「124」シリーズ(ベルリーナ/ステーションワゴン/スポルト・スパイダー)の新たな一員となる2ドア4シータークーペ、「124スポルト・クーペ」を追加しました。エクステリア・デザインはピニンファリーナに委託されたスポルト・スパイダーとは異なり、ベルリーナと同様社内チームにより手掛けられました。
エンジンはスポルト・スパイダーと共通
スタイリングはベルリーナともスポルト・スパイダーとも全く異なる、ノッチバックのエレガントなフォルムを備えていました。ボディサイズは全長4,115mm×全幅1,670mm×全高1,340mmで、ベルリーナよりも85mm長く59mm広く、そして80mm低いディメンションでした。ホイールベースはベルリーナと同一の2,420mmで、車両重量は100kg程増加し960kgとなりました。
駆動方式はコンベンショナルなFRを踏襲し、エンジンはスポルト・スパイダーと共通の1.4L直4DOHCシングルキャブレター仕様(最高出力90ps/最大トルク11kgm)が搭載されました。4速MTを介しての最高速度は164km/hで、これは1.2Lエンジンを搭載するベルリーナを24km/h上回るものでした。トランスミッションは、追って5速MTがオプション設定されました。
サスペンション形式は、ベルリーナ/スポルト・スパイダーと共通のフロント:ダブルウィッシュボーン+コイル式(スタビライザー付)/リア:3リンク+コイル式が踏襲されました。又、ブレーキもベルリーナ/スポルトスパイダーと同じく4輪ディスク式が採用されました。一方インテリアは、当初ウッド調のインパネやステアリングホイールが採用されました。
M/Cで内外装やエンジンを変更
そして1969年にマイナーチェンジが実施され、エクステリア面ではヘッドランプが丸型2灯式から丸型4灯式に変更されるなど、フロント廻りの意匠が一新されました。又、インテリア面ではインパネやステアリングホイールがブラック仕上げに変更されました。同時に、エンジンが1.6Lに拡大されアウトプットが最高出力112ps/最大トルク14kgmに向上、5速MTを介しての最高速度は184km/hとなりました。
次いで1972年の2度目のマイナーチェンジでは内外装デザインが刷新されると共に、エンジン・ラインナップが従来とはストロークが異なる1.6L直4DOHC(最高出力108ps)と、1.8L直4DOHC(最高出力118ps)の2種類に変更されました。そしてベルリーナが生産終了となった翌1975年に生産終了となりました。
124スポルト・クーペは、その性格上ベルリーナと異なり多くの国でライセンス生産が行われる事はなかったものの、唯一スペインのセアト社の手により「セアト・124スポルト」の名で生産が行われました。