フィアットは1966年秋のトリノ・ショーにおいて、「1500/1600Sカブリオレ」の後継モデルとなると同時に、小型乗用車「124」シリーズの新たな一員となる2ドアカブリオレ「124スポルト・スパイダー」を発表しました。エクステリア・デザインはピニンファリーナに委託され、ボクシーなベルリーナとは全く異なるスタイリッシュなボディが与えられました。
ベルリーナからホイールベースを短縮
ソフトトップが備わる2シーター・ボディのサイズは全長4,000mm×全幅1,615mm×全高1,250mmで、ベルリーナよりも30mm短く4mm広く、そして170mm低いディメンションでした。ホイールベースは140mm短い2,280mmに設定され、車両重量は70kg増加し925kgとなりました。駆動方式はFRを踏襲し、フロントに搭載されるエンジンは高性能化が図られました。
ベルリーナ用1.2L直4OHVをベースに、排気量を1.4Lに拡大すると共にツインカムヘッドが搭載され、アウトプットはベルリーナを大幅に凌ぐ最高出力90ps/最大トルク11kgmを発生しました。4速MTを介しての最高速度は、ベルリーナを31km/h上回る171km/hに達しました。又、ブレーキはベルリーナ同様4輪ディスク式が採用されました。
サスペンション形式は、これもベルリーナ同様のフロント:ダブルウィッシュボーン+コイル式(スタビライザー付)/リア:3リンク+コイル式が踏襲されました。そして1969年のフェイスリフトでフロントグリルの意匠が変更されると共に、エンジンが1.6Lに拡大されアウトプットが最高出力112ps/最大トルク14kgmとなり、5速化されたMTを介しての最高速度は180km/hに向上しました。
フィアット 124スポルト・スパイダーの走行シーン
高性能なアバルト・モデルを追加
次いで1972年、エンジン・ラインナップが従来とはストロークが異なる1.6L直4DOHC(最高出力108ps)と、1.8L直4DOHC(最高出力118ps)の2種類に変更されました。又、同じ年にアバルトに手によるコンプリートカー「124アバルト・ラリー」がリリースされました。ボディは外装の変更と共にFRP製の前後フードやハードトップなどが装着され、車両重量が938kgに軽量化されました。
又、リアサスペンションはストラット独立懸架式に変更されました。エンジンは、スポルト・スパイダー1800用の1.8Lユニットにツインキャブレターを装着した物が搭載され、最高出力130ps、最高速度190km/hの性能を発揮しました。そして1974年にベルリーナが生産終了となった後も、スポルト・スパイダーは北米市場専用モデルとして販売が継続されました。
但し、北米の厳しい排出ガス規制に適合する為、搭載される1.8Lユニットの最高出力は87psにドロップしました。しかし、1978年に入ると排気量が2Lに拡大され最高出力が105psに向上、更に翌1979年にはフューエルインジェクションが装着されました。続いて1982年には、この北米仕様をベースとしたモデルが「ピニンファリーナ・スパイダー」と車名を改めた上、欧州で再発売されました。
更に同年のトリノ・ショーで、2Lスーパーチャージド・エンジン(最高出力135ps)を搭載する「スパイダー・ヴォルメックス」が発表されました。そして1985年に両モデル共に生産を終了、19年に及ぶ歴史に終止符が打たれました。