アウディは1999年、1996年にリリースしたCセグメントコンパクトカー「A3」の弟分になると同時に、同社のエントリーモデルと位置付けられたBセグメントコンパクトカー「A2」を発売しました。最大の特徴はオールアルミニウムボディを採用した事で、競合車種と目された同グラスの「メルセデス・ベンツ Aクラス」よりも遥かに軽量に抑えられていました。
優れた空力特性を実現
ボディタイプは5ドアハッチバックのみの設定で、スタイリングはA3との共通性はなく、張り出した前後のホイールアーチや円弧状のルーフ、ルーフまで回り込んだ独特な形状のリアウィンドウなど、個性的なフォルムを備えていました。又、空力特性の向上にも注力され、Cd値はハッチバック車としては優秀な0.25~0.28を実現していました。
又、ボディの構造面での特徴として、エンジンフードがヒンジによる開閉機構を持たない着脱式で、日常のメンテナンスは開閉式のフロントグリルから行う構造となっている点が挙げられました。ボディサイズは全長3,826mm×全幅1,673mm×全高1,553mmで、A3に対し全長・全幅は一回り小振りである一方、全高は100mm以上高い独特なディメンションでした。
ホイールベースはA3よりも100mm以上短い2,405mmで、車両重量は895~1,030kgでした。サスペンション形式は、フロント:マクファーソンストラット式/リア:トーションビーム式が採用されました。駆動方式はFFのみの設定で、同社の代名詞ともいえるフルタイム4WD方式「クワトロシステム」は用意されませんでした。
低燃費の「3Lカー」も用意
搭載エンジン及びグレードは、当初1.4L直4DOHCガソリンNA(最高出力75ps/最大トルク12.8kgm)搭載の「1.4」、1.2L直3SOHCディーゼルターボ(最高出61ps/最大トルク14.3kgm)搭載の「1.2TDI」、1.4L直3SOHCディーゼルターボ(最高出89ps/最大トルク23.5kgm)搭載の「1.4TDI」の3種類が用意されました。トランスミッションは5速MTの他、ディーゼル車に5速AMTが設定されました。
これらのグレードの中で最も画期的だったのは1.2TDIで、徹底的な軽量化が図られたボディに加え、アイドリングストップ機構やころがり抵抗の低いタイヤの採用などにより、3Lの燃料で100kmの走行が可能な経済性(通称3Lカー)を実現してました。そして2002年に、1.6L直4DOHC直噴ガソリンNAエンジン(最高出力110ps/最大トルク15.8kgm)+5速MT搭載の「1.6FSI」が追加されました。
その後、様々な仕様変更が行われた後、2005年に生産終了となりました。アウディ・A2は意欲作であったものの商業的には失敗に終わり、ガソリンAT仕様の設定が無いなどの理由から日本市場への正規輸入も見送られました。