フェラーリは1985年のフランクフルト・ショーで、V8エンジンを搭載する2シーター・スポーツカー「308GTB/GTS」の後継モデルとなる「328GTB/GTS」を発表しました。基本設計は308GTB/GTS譲りながら、エンジンの排気量が拡大されパフォーマンスが向上したほか、インパネのデザインが変更され視認性や操作性が向上するなど、総合的な熟成が図られました。
ボディタイプは、GTBがフィクスドヘッドのクーペ、GTSがデチャッタブルトップのスパイダーで、デザインは308GTB/GTSに引き続きピニンファリーナの手により行われました。スタイリングは、基本的なフォルムを308GTB/GTSから踏襲するものの、フェイスリフトによりウインカーやドライビングランプが内蔵されたフロントグリルが与えられました。
大幅なパワーアップを実現
ボディサイズは全長4,255mm×全幅1,730mm×全高1,128mmで、308GTB/GTSからそれぞれ25mm×10mm×8mm拡大されました。ホイールベースは10mm延長され2,350mmとなり、車両重量は10kg程軽量化されGTBで1,263kg、GTSで1,273kgとなりました。従来通りミッドシップマウントされるV8DOHCエンジンは、ボア・ストローク共に拡大され排気量が0.2L大きい3.2Lとなりました。
又、圧縮比はそれまでの9.2:1から9.8:1まで高められ、燃料供給装置は従来同様ボッシュKジェトロニック燃料噴射装置が採用されました。スペックは最高出力270HP/7,000rpm・最大トルク31kgm/5,500rpmで、308GTB/GTSの最高出力237HP/7,000rpm・最大トルク26.5kgm/5,000rpmから大幅なアウトプット向上を実現しました。
トラスミッションは1速~5速のギアレシオが同一の5速MTが踏襲されたものの、ファイナルレシオのみ高められていました。パフォーマンスは最高速度が12km/hアップの263km/h、0-60mph加速が0.7s短縮された6sとなりました。その他、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式や、4輪ベンチレーテッド・ディスク式のブレーキ、ラック&ピニオン式のステアリング形式などは308GTB/GTSから踏襲されました。
テスタロッサと異なる個性により人気モデルに
一方タイヤサイズは、308GTB/GTSが前後とも240/55VR415であったのに対し、フロントが205/55VR16、リアが225/50VR16に変更されました。その後は目立った変更もないまま生産が続けられ、1989年に後継モデル「348tb/ts」にバトンタッチされ生産終了となりました。愛好家からの評価は高く、新車で販売されていた当時は特にGTSがGTB以上に人気を博しました。
又、同世代のフラッグシップモデル「テスタロッサ」が前身の「512BBi」に対しGTカー路線を強めていたのに対し、328GTB/GTSは308GTB/GTS譲りのピュアスポーツカー路線が貫かれた事で、その持ち味がより鮮明になっていました。そして、現在でも中古車市場での人気が高いモデルとなっています。