日野自動車は、1953年から開始した「ルノー・4CV」の生産により得た自動車製造のノウハウを生かし、1961年に完全オリジナル設計の乗用車「コンテッサ900」を発売しました。基本的なメカニズムは4CVを手本としながらも、スタイリングを相応に近代化すると共に一部に独自の機構を導入するなど、処女作ながら意欲的な試みも行われました。
ボディは3ボックス型
ボディタイプは4ドアセダンで、卵型のボディが特徴だった4CVとは全く異なり、直線を基調とした3ボックスボディを備えていました。又、4CV同様駆動方式にRRを採用した為、RR車特有のロングデッキのプロポーションや、リアフェンダー前部にエンジン冷却用のエアインテークが備わる点が特徴でした。又、当時のアメリカ車の流行に倣って取り入れたテールフィンも独自の個性となっていました。
ボディサイズは全長3,805mm×全幅1,475mm×全高1,415mmで、全高を除き4CVより一回り大きく、ホイールベースも若干長い2,150mmでした。又、最低地上高は当時の道路事情の悪さを考慮し、205mmと大き目に取られていました。車両重量は標準グレード「スタンダード」が720kg、上級グレード「デラックス」が750kgで、4CVよりも80kg程増加していました。
先進的なサスペンションを採用
サスペンション形式はフロントがウィッシュボーン/コイル式、リアがスイングアクスル/コイル式による4輪独立懸架で、車体のピッチングとローリングを抑制する為リアサスペンションにそれまで前例のなかったラジアスアームが設置されるなど、当時の国産車としては先進的な機構が採用されていました。ステアリングはラック&ピニオン式で、ブレーキは当時として一般的な4輪ドラム式でした。
リアに搭載されるエンジンは4CV用から発展した水冷900cc直4OHVのGP型で、最高出力35ps/5,000rpm・最大トルク6.5kgm/3,200rpmのスペックは、4CVの水冷750cc直4ユニットが発生する21ps/5kgmよりも格段に強力なものでした。トランスミッションはRR車には珍しいコラムシフトを採用した3速MTが標準で、オプションで2ペダルMTの「シンコー・ヒノマチック」も用意されていました。
カタログスペック上の最高速度は110km/hで、4CVを10km/h上回っていました。室内面では、当時の乗用車として一般的だった扇形のスピードメーターが備わるインパネを持ち、シートは前後共にベンチシートが採用されました。乗員5人の為の十分な居住性が確保される事や、フロントシート下部に設けられたベンチレーターによる換気性能の高さ、リアエンジン車ならではの静粛性の高さなどがセリングポイントでした。
そして1964年に上級モデルとして「コンテッサ1300」が発売された後も、1965年まで並行して生産が続けられました。