マツダの2シータースポーツカー「コスモスポーツ」は、1967年5月、世界で初めて2ローター式ロータリーエンジンを搭載した市販車として発売されました。(ちなみに世界初のロータリーエンジン搭載市販車は、500cc x 1ローターを搭載し1964年に発売したNSU・ヴァンケルスパイダー)
乗用車メーカーとしては後発であったマツダは、先行する競合メーカーに対抗すべくロータリーエンジンの実用化に社運を賭け、それが結実した成果がコスモスポーツでした。
マツダのロータリーエンジン開発は1961年より始まり、1964年に東京モーターショーの会場にて、ロータリーエンジン搭載車第一弾としてコスモスポーツのプロトタイプが発表されました。エンジンの排気量は異なるものの、この段階で後の市販モデルに近いスタイリングになっていました。
高性能ロータリーエンジンと軽量ボディ
その後、高速連続耐久テストを繰り返し実用性能を磨き込み、1967年5月に正式に市販モデルの発売が開始されました。搭載されたエンジンは排気量491cc×2ローターの10A型で、最高出力110ps/7,000rpm、最大トルク13.3kgm/3,500rpmという、1.6Lクラスのレシプロエンジンを凌ぐスペックを発揮しました。最高速度185km/h、0-400m加速16.3sという動力性能も、当時としては第一級のものでした。
トランスミッションは当時のスポーツカーやGTカーで一般的だった4速MTで、駆動方式はこれもコンベンショナルなFR方式でした。サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン/コイル式、リアがドディオンアクスル/リーフ式で、ブレーキはフロントがディスク、リアがドラムでした。
ボディサイズは全長4,140mm×全幅1,595mm×全高1,165mmで、当時の国産車としては極端に低い全高が特徴でした。又、奇しくも同月に発売開始となった「トヨタ・2000GT」よりも僅かに小さいボディサイズでした。車両重量は940kgと軽量で、トヨタ2000GTより180kgも軽く、小型軽量なロータリーエンジンの面目躍如たるスペックでした。
マツダ コスモスポーツのCM
マツダ コスモスポーツの解説動画
スマートなスタイリングとスポーティなインテリア
スタイリングは、ロングノーズ・ロングデッキのプロポーションで、低いノーズと流れるようなボディラインを持つ、新時代のスポーツカーに相応しいものでした。又、ホイールベースが2,200mmと全長の割に短く(トヨタ・2000GTは2,330mm)、リアのオーバーハングが長い事もデザイン上の特徴でした。更に、リアバンパーの上下に配置された独特なデザインのテールランプは、外観の個性を一層際立たせるものでした。
内装面では、内貼りやシート、ダッシュボードなどが黒一色に統一されると共に、7連メーターやナルディ製の3スポークウッドステアリングを装備し、スポーティな雰囲気を醸していました。又、シートの後方に手荷物を置く為のスペースも用意されるなど、実用面にも配慮されていました。
マイナーチェンジで更に性能が向上
翌1968年7月にマイナーチェンジを実施し、エンジンのスペックが最高出力128ps/7,000rpm、最大トルク14.2kgm/5,000rpmに向上すると同時に、トランスミッションが5速化されました。これにより、動力性能は最高速度200km/h、0-400m加速15.8sに向上し、2Lクラスのレシプロエンジン搭載スポーツカーに迫る性能となりました。
同時にボディとシャシーのスペックも変更され、全長が10mm短縮された一方、ホイールベースが150mm、トレッドが前後共に10mm拡大され、車両重量は20kg重い960kgとなりました。装備面では、ブレーキにサーボアシストが備わった事や、ホイールが大径化された事などが相違点でした。外観上は、フロントバンパー下部のラジエターグリルの開口部が大きくなった事が最大の変更点でした。
コスモスポーツに搭載されたロータリーエンジンのフィーリングは、スムーズかつ低振動・低騒音で、当時のレジプロエンジンとは異次元のものでした。加速性能の高さと相まって、正に飛ぶようなフィーリングが持ち味でした。コスモスポーツは、価格が極めて高価だった事もあり、生産期間5年間での販売台数は1,200台余りに過ぎませんでしたが、マツダの技術力、そしてロータリーエンジンの性能を世界に知らしめる非常に大きな存在となりました。
後継モデル:2代目コスモ
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