かつてイギリス最大の自動車メーカーとして君臨していたBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)は、1959年に2つの新型大衆車を発表しました。ひとつはオースチン・ブランドの「セブン」、もうひとつはモーリス・ブランドの「ミニ・マイナー」で、のちに「ミニ」と改名された両モデルは革新的なレイアウトや実用性・経済性の高さなどにより、自動車史上に名を刻む名車となりました。
合理的なパッケージング
設計者は同社のエンジニアであったアレック・イシゴニスで、車体は当時としては先進的なモノコック構造が採用されました。ボディタイプは当初2ボックス型2ドアセダンのみの設定で、エクステリアは合理性を追求した結果生まれた機能美とファニーな魅力を併せ持っていました。また、オースチン・セブンとモーリス・ミニマイナーの相違点は、フロントグリルの意匠とエンブレム程度に留まっていました。
ボディ・ディメンションは全長3,050mm×全幅1,410mm×全高1,350mm、ホイールベース2,030mmで、当時ヨーロッパで流行していたバブルカーと呼ばれる軽便なキャビンスクーターを一回り大きくした程度のコンパクトなものでした。しかし、小径の10インチホイールをボディ四隅に配置するなど、極限までパッケージングを追求した設計により大人4人のための十分な居住性を確保していました。
ドライブトレインは、FRやRRが主流であった当時の大衆車としては画期的な横置きFF方式が採用されました。エンジンは、既に実績のあった水冷850cc直4OHVの「Aシリーズ」(最高出力34ps/最大トルク6.1kgm)が採用されました。トランスミッションは4速MTで、スペース効率を稼ぐためエンジンとスタッキングした2階建て構造が採用されました。
サスペンションは当時としては先進的な4輪独立懸架で、形式はフロントがウィッシュボーン式、リアがトレーリングアーム式でした。また、スペース効率を高めるため、一般的なコイルスプリングではなくラバーコーンが採用されたことも特徴でした。ステアリング形式は、ロック・トゥ・ロック2 1/3回転のクイックなギアレシオが備わるラック&ピニオン式が採用されました。
バンやピックアップ、高性能版を追加
ブレーキは、当時として一般的な4輪ドラム式が装備されました。その後、新たなボディ・バリエーションとして、1960年にホイールベースを延長するとともにリアに荷室を設けた商用車「ミニ・バン」と、それをベースとしたステーションワゴン「オースチン・ミニ・カントリーマン/モーリス・ミニ・トラベラー」が、さらに1961年にバンをベースとした小型トラック「ミニ・ピックアップ」が追加されました。
また、この1961年には、アレック・イシゴニスの友人であったジョン・クーパーがチューンナップを手掛けたハイパフォーマンス版、「ミニ クーパー1000」がリリースされました。排気量が1Lに拡大されるとともに圧縮比アップやツインキャブレター化などの手が加えられ、アウトプットは最高出力54ps/最大トルク7.5kgmまで向上していました。
M/Cを重ね性能・機能をリファイン
次いで1962年にセブンの車名がミニに変更された後、1964年にミニ/ミニマイナー両モデルに初の大規模なマイナーチェンジが実施され、それまでのラバーコーン式に代わり水とゴムを用いたハイドロラスティック・サスペンションが採用されました。追って翌1965年には、オプションで4速ATが設定されました。続いて1967年、ミニ/ミニマイナー両モデルに再びマイナーチェンジが実施され、Mk-Ⅱに移行しました。
識別のためMk-Ⅰと呼ばれることとなった従来型からエクステリアが近代化されたほか、1Lエンジン(最高出力38ps/最大トルク7.2kgm)を搭載する「1000」が追加されました。次いで1969年、3度目のマイナーチェンジによりMk-Ⅲに移行するとともに、車名がミニに統一されました。主な変更点は、サスペンションが再びラバーコーン式に戻されたことと、スライド式のサイドウィンドウが巻き上げ式に変更されたことでした。
その後、1984年にタイヤが12インチに拡大され乗り心地が向上するとともに、フロントにディスク・ブレーキが採用されました。さらに1991年には、キャブレターに替わり電子燃料噴射装置が採用されました。そして2000年をもって生産を終了、41年におよぶ歴史い幕を下ろしました。