日産の2ドアクーペ「GT-R」は、まず2001年の東京モーターショーにおいてデザインスタディモデル「GT-Rコンセプト」が出展され、R34型「スカイラインGT-R」の後継モデルが開発中である事が示唆されました。そしてR34型スカイラインGT-Rが生産終了となってから5年後の2007年10月、市販モデルが公式に発表されました。発売当初から量販車世界最速を誇り、現在もそのポジションを維持しています。
スカイラインから独立
車名からスカイラインの名が消えたように、歴代のGT-Rとは異なりスカイラインから独立した別の車種となり、先行して発売されたCV36型「スカイラインクーペ」とはスタイリングもメカニズムも全くの別物となっています。スタイリングは、コンセプトモデルのイメージを受け継ぎながら、全長が長く全幅が狭いディメンションに変化し、実用性にも配慮した現実的なデザインになりました。
又、空力特性を追求したボディによりCd値0.27を実現した他、初代スカイラインGT-R(ハコスカ)のプレスラインや、2代目スカイラインGT-R(ケンメリ)の丸型4灯式テールランプを取り入れるなど、歴代モデルのテイストを取り入れた事も特徴でした。ボディサイズは全長4,655mm×全幅1,895mm×全高1,370mmで、R34型スカイラインGT-Rよりも一回り大きく、スカイラインクーペとの比較ではワイド&ローのディメンションを持っていました。
プラットフォームはGT-R専用に開発された物で、ホイールベースはスカイラインクーペよりも短い2,780mmに設定されました。ボディはドアやボンネットにアルミニウム素材が採用され、車両重量は1,740kgでした。サスペンション形式はフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:マルチリンク式で、ビルシュタイン製ダンパーが採用された他、ブレーキはブレンボ製4輪ベンチレーテッドディスク式が採用されました。
高性能エンジンと独自の4WD方式の組み合わせ
パワートレインはスカイライン用とは別設計の、新開発された3.8L V6ツインターボのVR38DETT型が搭載されました。スペックは最高出力480ps/6,400rpm、最大トルク60kgm/3,200~5,200rpmで、R34型スカイラインGT-Rを出力で200ps、トルクで20kgm上回り、ライバルと目された「ポルシェ911ターボ」にほぼ匹敵するものでした。トランスミッションは、従来の6速MTに替えて6速DCTが採用されました。
GT-R イメージムービー
駆動方式はR32型スカイラインGT-R以来踏襲される4WDで、新たに「独立型トランスアクスル4WD」が採用されました。これは、前後重量配分を最適化する為にエンジンとトランスミッションを分離配置し、通常はFRで走行し後輪が滑った際に前輪にトラクションを掛ける方式となります。このパワートレインと駆動方式によるトラクション性能は絶大で、0-100km/h加速タイムはポルシェ911ターボを凌ぐ3.6sをマークしました。
毎年バージョンアップし走行性能が向上
翌2008年12月に2009年モデルが発表され、エンジン及びコンピューター制御の制度向上により最高出力が5ps向上し485psとなった他、ショックアブソーバーの刷新により操縦安定性と乗り心地の改善が図られました。次いで2009年2月に、専用サスペンションやブレーキ、ハイグリップタイヤを装備すると共に、カーボン製パーツの多用や2シーター化によりボディを60kg軽量化した「スペックV」が追加されました。
そして2010年12月に初のマイナーチェンジを実施して2011年モデルとなり、バンパーやエアロパーツなどの変更によりCd値が0.26に向上し、ダウンフォースが約10%改善されました。同時に、エンジンの高効率化によりスペックが最高出力530ps/6,400rpm、最大トルク62.5kgm/3,200~6,000rpmに向上し、最高速度が従来の309km/hから315km/hに向上しました。又、足回りの改良やブレーキ性能の強化も図られました。
次いで2011年11月に発表された2012年モデルでは、エンジン・トランスミッション・足回り・ボディなどあらゆる項目において改善が図られ、エンジンのスペックは最高出力550ps/6,400rpm、最大トルク64.5kgm/3,200~5,800rpmまで向上しました。又、「スペックV」がカタログ落ちし、代わりにそれに順じた装備を持つ「For TRACK PACK」がセットオプション設定されました。
そして2012年11月発表の2013年モデルは、エンジンの中速レスポンスや高回転域の伸びの改善、足回りの仕様変更やボディ剛性強化などの改良が行われました。次いで2013年11月に2度目のマイナーチェンジを実施して2014年モデルとなり、内外装の一部変更が行われた他、足回りを中心に走行性能の改良が図られました。それと同時に、ハイパフォーマンスモデル「GT-R NISMO」が発表されました。
大容量タービンの採用などによりエンジンのスペックが最高出力600ps/最大トルク66.5kgmまで高められた他、専用サスペンションや専用タイヤ&アルミホイール、専用エアロパーツなどが装備されました。この「GT-R NISMO」は、同年行われたニュルブルリンク北コースでのタイムアタックにおいて、量産車世界最速となる7分8秒679のタイムをマークしました。
GT-R NISMO イメージムービー
そして2014年11月、走行安定性や静粛性の改善が図られた2015年モデルが発表され、現在に至っています。GT-Rは、単にトップレベルの走行性能を持つばかりでなく、海外製のスーパーカーと異なり居住性や快適性にも配慮され、実用性が確保されている点も大きな特徴となっています。