いすゞの中型セダン「アスカ」の初代モデルは、1982年に生産終了となった「フローリアン」の後継モデルとして1983年2月に発売が開始されました。完全オリジナル設計であったフローリアンと異なり、当時のいすゞはGM傘下に入っていた為、GMのグローバルカー構想の元で設計が行われました。コンベンショナルな構成を持つセダンながら、刮目すべき機構も導入されました。
シンプルな内外装デザイン
スタイリングは、直線を基調としたシンプルな造形で、個性の強かったフローリアンとは異なり万人受けを狙ったコンサバティブなものでした。又、4ドアセダンのみの設定で、ステーションワゴンなどをラインナップしないシンプルなバリエーション体系でした。ボディサイズは全長4,440mm×全幅1,670mm×全高1,375mm、ホイールベースは2,580mmで、このクラスのセダンとして標準的なディメンションでした。
いすゞアスカのCM(1983)
インテリアは、エクステリア同様に直線的かつすっきりとしたデザインのインパネを持つ他、最上級グレードには当時流行していたデジタル式メーターが採用されました。サスペンション形式は、前:マクファーソンストラット式/後:トーションビーム+トレーリングアーム式で、駆動方式は当時の世界的潮流に則り、いすゞの乗用車としては初めてFFが採用されました。
エンジンはディーゼルを含め多種類を設定
エンジンは、ガソリンの他いすゞが得意としていたディーゼルも設定されました。ラインナップは、ガソリンが1.8L直4キャブレター仕様(最高出力105ps)、2L直4キャブレター仕様(最高出力110ps)、同エレクトロキャブ(電子制御キャブレター)仕様(最高出力115ps)、同ECGI(電子燃料噴射)ターボ仕様(最高出力150ps)の4種類で、ディーゼルは2L直4(最高出力66ps)の1種類でした。
いすゞアスカのCM (NAVi5)
トランスミッションは5速MTの他、ガソリンNA車には3速トルコン式ATも設定されました。そして同年8月、2L直4インタークーラーターボディーゼル車(最高出力89ps)が追加されました。次いで翌1984年1月に、ディーゼル車にもAT仕様を設定、更に同年8月には、ガソリン車に油圧アクチュエーターによりクラッチ操作を行ういすゞ独自の5速セミAT「NAVi5」搭載車が設定されました。
翌1985年2月にディーゼル車にもNAVi5搭載グレードが設定され、次いで同年8月にマイナーチェンジを実施しフェイスリフトを行いました。更に同年10月には、ガソリンターボ車をベースに西ドイツ(当時)のチューナー「イルムシャー」の手により走行性能のブラッシュアップを図ると共に、専用エアロパーツやレカロシートなどを装備したスポーティグレード「イルムシャー」が追加されました。
そして1989年3月、同社の乗用車自主生産撤退に伴い生産を終了し、「スバル・レガシィ」のOEMとなる2代目アスカ(アスカCX)にバトンタッチされました。初代アスカは、ガソリンターボ車の高性能やNAVi5が注目を集めたものの全体的には個性に乏しく、いすゞの販売ネットワークの弱さもあり商業的には成功しませんでした。
アスカ登場前のセダン:フローリアン