ゼネラルモーターズ(GM)は2005年のフランクフルト・モーターショーにおいて、ヨーロッパ市場を主要なマーケットとしたキャデラック・ブランドの新型小型乗用車「BLS」を発表、翌2006年3月に販売を開始しました。傘下に収めていたサーブ社の2代目「9-3」をベースに開発されたモデルで、フロントおよびリアまわりに本家と異なるキャデラック独自の意匠が採用されました。
サーブの工場で生産
生産は、スウェーデンにあるサーブ社の工場で行われました。プラットフォームは、サーブ・9-3のほか多くのGMグループ製モデルに採用される「GMイプシロンプラットフォーム」で、ボディタイプは当初4ドアセダンのみが用意されました。エクステリア・デザインは、前述のとおりサーブ9-3から差別化が図られていたものの、優れた空力特性は9-3譲りでした(※Cd値は0.31)。
ボディサイズは全長4,680mm×全幅1,752mm×全高1,471mmで、サーブ・9-3から全長が若干延長された一方、2,675mmのホイールベースは共通でした。サスペンション形式はフロントにマクファーソンストラット式、リアに4リンク式が採用され、駆動方式は当時のサーブ・9-3同様FFのみの設定でした。
エンジンは4種類
エンジンは当初、過給圧の異なる2種類の2L直4DOHCターボ(最高出力175ps/最大トルク27kgmおよび最高出力210ps/最大トルク30.6kgm)と、2.8L V6DOHCターボ(最高出力255ps/最大トルク37.2kgm)のガソリン3種類と、フィアット製の1.9L直4DOHCディーゼルターボ(最高出力150ps/最大トルク32.6kgm)が用意されました。
トランスミッションは、5速/6速MTと5速/6速トルコン式ATが設定されました。これらのパワートレインのうち最も強力な2.8Lエンジンと6速MTを組み合わせたモデルは、最高速度250km/h・0-100km/h加速6.9sのパフォーマンスを発揮しました。また、ブレーキは前後ともベンチレーテッド・ディスク式が奢られ、ステアリング形式はロック・トゥ・ロック2.75:1のラック&ピニオン式が採用されました。
ワゴンを追加
一方インテリア面では、タッチスクリーン式のDVDナビゲーションシステムやボーズ製プレミアムオーディオシステムなどが標準で備わりました。その後2007年に、5ドアステーションワゴン版の「BLSワゴン」がラインナップに加わりました。ボディサイズは全長4,716mm×全幅1,752mm×全高1,543mmで、セダンから全長と全高が拡大されていました。
さらにこの年、1.9Lディーゼルターボエンジンにハイプレッシャー仕様(最高出力180ps/最大トルク37.7kgm)が追加されました。また、同年からサウジアラビア、メキシコ、南アフリカ、韓国への輸出が開始されました。しかしながら世界各地での販売は振るわず、2009年をもって生産は打ち切られました。キャデラック・BLSはアメリカ本国では販売されず、日本への輸出も行われませんでした。