マセラティは1987年に、主力小型車「ビトゥルボ」の4ドアセダン版として1983年に登場した「ビトゥルボ425」の後継モデルとなる、「430」をリリースしました。内外装の雰囲気や基本的なメカニズムはビトゥルボ425譲りであったものの、様々なリファインにより完成度の向上が図られていました。
フロントグリルの意匠を変更
スタイリングは直線基調のシャープな造形を踏襲するものの、角張ったデザインだったフロントグリルは丸みを帯びた形状に変更されました。ボディサイズは全長4,430mm×全幅1,730mm×全高1,360mm、ホイールベースは2,600mmで、ビトゥルボ425から全長が30mm拡大された以外は同一のスペックでした。一方車両重量は、220kg増加し1,400kgとなっていました。
サスペションは、フロント:マクファーソンストラット式/リア:セミトレーリングアーム式の形式を踏襲しつつ、新たにフロントサスペンションのステアリングラックとステアリングアームの間にS字型のロッドを挟む「メカニカ・アッティバ」を採用し、ステアリングレスポンスの改善と操舵力の低減が図られました。同時に、フロントにスタビライザーが追加されました。
又、4輪ディスク式のブレーキはフロントがベンチレーテッド型にアップグレードされ、リア・ディファレンシャルはそれまでのセンシトルクに代わり信頼性に優れた「レンジャー・デフ」が採用されました。その他、タイヤは195/60VR14から205/50VR15へと大径かつワイド&扁平化されたものが装着されました。
上級モデル用のエンジンに置換
駆動方式はビトゥルボ425と同様のFRを踏襲し、エンジンはそれまでの2.5L V6SOHCツインターボから、上級2ドアクーペ「228」に搭載されていた2.8L V6SOHCツインターボに置換されました。スペックは最高出力225ps/5,500rpm・最大トルク37kgm/3,500rpmで、最高出力で25ps、最大トルクで6kgmの向上を果たしました。
トランスミッションは従来同様の5速MTと、3速から4速へと多段化されたトルコン式ATが設定されました。MT仕様のパフォーマンスは最高速度233km/h・0-100km/h加速6sで、車両重量の大幅な増加にも関わらず最高速度は17km/hの向上を果たしました。一方インテリアは、ステアリングホイールやサイドブレーキレバーにウッドが採用されるなど、一段とゴージャスな雰囲気になっていました。
そして1991年に、DOHC&4バルブ化された2.8Lツインターボエンジン(最高出力279ps/5,500rpm・最大トルク43.9kgm/3,750rpm)を搭載し、最高速度255km/hの性能を実現した高性能版「430.4V」が追加されました。430シリーズの生産は1994年まで継続されました。