ダイムラー・ベンツ(現ダイムラーAG)は1972年9月、フラッグシップセダンW108/109型に7年ぶりのフルモデルチェンジを実施し、W116型に移行させました。従来通称として使われていた「Sクラス」を初めて正式名称としたモデルで、エクステリア面では衝撃吸収ボディや大型の灯火類が、インテリア面ではパッド付のインパネやドア内張りが採用されるなど、従来から大幅な安全性向上を実現しました。
全長とホイールベースを延長
先代同様、標準仕様とロングホイールベース仕様が用意される4ドアボディのスタイリングは、ヘッドランプが縦型から横型に変更されるなど大きくイメージを変えました。ボディサイズは、欧州仕様で全長4,960mm(標準仕様)/5,060mm(ロングホイールベース仕様)×全幅1,870mm×全高1,410~1,430mmとなり、先代から全長・全幅がそれぞれ60mm拡大された一方、全高は僅かに低くなりました。
ホイールベースは115mm延長され、標準仕様で2,865mm、ロングホイールベース仕様で2,965mmとなりました。サスペンション形式は、フロントはダブルウィッシュボーン式を踏襲する一方、リアは同社伝統のスイングアクスル式に代わり、より高い操縦安定性が望めるセミトレーリングアーム式に変更されました。
駆動方式は従来同様のFRで、搭載エンジン及びグレード体系は、当初2.8L直6SOHCツインキャブレター仕様(最高出力142ps/最大トルク22.8kgm)搭載の「280S」、同燃料噴射仕様(最高出力185ps/最大トルク24.3kgm)搭載の「280SE」、3.5L V8SOHC燃料噴射仕様(最高出力200ps/最大トルク29.2kgm)搭載の「350SE」の標準ボディ3タイプと、350SEのロングホイールベース版「350SEL」が用意されました。
トランスミッションは、従来同様4速MT又は4速トルコン式ATが組み合わせられました。又、4輪ディスク式を踏襲するブレーキは、280Sを除きフロントがベンチレーテッド型にアップグレードされた他、オプションで世界初のABSが設定されました。そして翌1973年、4.5L V8SOHC燃料噴射仕様エンジン(最高出力225ps/最大トルク38.5kgm)を搭載する「450SE」「450SEL」が追加されました。
6.9L V8エンジン搭載車を追加
次いで1974年には、280SEのロングホイールベース版となる「280SEL」が追加になりました。更に1975年、6.9L V8SOHC燃料噴射仕様エンジン(最高出力286ps/最大トルク56.1kgm)+3速トルコン式を搭載する「450SEL6.9」が追加されました。これは先代の「300SEL6.3」の後継モデルにあたり、最高速度225km/h・0-100km/h加速7.4sというセダンとしては際立った高性能を備えていました。
続いて1977年、北米市場専用モデルとして、3L直5ディーゼルターボエンジン(最高出力121ps/最大トルク23.5kgm)を搭載する「300SD」がリリースされました。そして1979年9月のフランクフルト・ショーで2代目W126型がデビューした事に伴い、生産終了となりました。