ランチアは1963年のジュネーブ・ショーで、「アッピア」の後継モデルとなる小型車「フルヴィア」を発表しました。駆動方式はアッピアのFR方式に対し、2年前に登場した中型車「フラヴィア」と同様のFF方式を採用、サスペンションやブレーキもフラヴィア同様の形式が踏襲されました。又、アッピアやフラヴィアと同様、セダンの他にクーペやスポルトも用意されました。
拡大されたボディに新開発のV4エンジンを搭載
まず最初に登場した4ドアセダン「ベルリーナ」は、社内デザインによる直線基調のボクシーなスタイリングが特徴でした。ボディサイズは全長4,160mm×全幅1,555mm×全高1,400mmで、全高を除きアッピアから一回り拡大された一方、ホイールベースは同一の2,480mmでした。車両重量は800kgそこそこだったアッピアから大幅に増加し、1トンに迫る995kgとなりました。
サスペンション形式は、フロントはアッピアのスライディングピラー式からフラヴィアと同じダブルウィッシュボーン/横置リーフ式に変更され、リアはアッピアやフラヴィア同様のリジッド・リーフ式が受け継がれました。又、ブレーキはフラヴィア同様の4輪ディスク式が採用されました。
エンジンは水平対向4気筒のフラヴィアとは異なり、新設計の1.1L挟角V4 SOHC(最高出力58ps/最大トルク8.4kgm)が採用され、4速MTと組み合わせられました。そして1965年に、ツインキャブレター化などにより最高出力を71psに高めた「2C」と共に、社内デザインによるクーペと、ザガード・デザインの流麗なクーペボディを持つ「スポルト」がラインナップに加わりました。
ラリー競技のベースモデルを投入
クーペ及びスポルトはホイールベースが2,330mmに短縮されると共に、ボアアップにより排気量が1.2Lに拡大されたエンジン(最高出力80ps/最大トルク10.6kgm)が搭載されました。次いで1966年に、1.2Lユニットのアウトプットを最高出力88ps/最大トルク11kgmまで高め、車両重量を825kgまで軽量化したラリー競技のベースモデル「クーペHF」が追加されました。
更に翌1967年には、クーペとスポルトのエンジンがボア・ストローク共に拡大され1.3Lとなり、最高出力が標準モデルは87psに、クーペHFは101psにパワーアップされました。同時に、最高出力90psの同ユニットを搭載する「クーペS」「スポルトS」が追加されました。次いで1969年に、最高出力115ps/最大トルク15.6kgmの1.6Lユニットを搭載する「クーペ・ラリー1.6HF」が登場しました。
同時に、ベルリーナのエンジンが遅ればせながら1.3Lに置換されました。そして1970年にクーペとスポルトがシリーズ2にマイナーチェンジされた後、ベルリーナとスポルトは1972年に生産終了となりました。残るクーペは1974年にシリーズ3となり最高出力90psの1.3Lエンジンに一本化された後、1976年に生産を終了しました。