トヨタのコンパクトカー「ヴィッツ」の初代モデルは、1999年1月に発売が開始されました。それまでの同社のエントリーモデルは、排気量1.3Lの「スターレット」でしたが、当初1Lのみでスタートしたヴィッツは、事実上その後継モデルとしての役割を持って生まれました。
アグレッシブかつ近代的なボディ
エクステリア・デザインはギリシャ人デザイナーの手によるもので、コンサバな雰囲気であったスターレットなどのトヨタ製コンパクトカーはもとより、国内外で類を見ないアグレッシブな雰囲気を備えていました。ボディ形状は3ドア及び5ドアのハッチバックで、初代モデルに限り国内でも3ドアモデルが販売されました。
ボディサイズは、全長3,610mm×全幅1,660mm×全高1,500mmで、スターレットよりも全長が短く全幅がワイド、そして全高が高い近代的なディメンションを備えていました。ホイールベースはスターレットよりも70mm長い2,370mmで、前後のオーバーハングを切り詰めたスタイリングになっていました。又、車両重量は810kg~880kgで、スターレットよりもかなり軽量に抑えられていました。
新開発のエンジンと優れたパッケージング
エンジンは、新開発の1L 直4 DOHCの1SZ-FE型で、最高出力70ps/最大トルク9.7kgmの、軽量なボディには必要十分な性能を備えていました。トランスミッションは5速MTと4速トルコン式ATが用意され、駆動方式は当初FFのみでした。サスペンションは、前ストラット式/後トーションビーム式のオーソドックスな形式でした。
又、高めに設定された全高とロングホイールベースにより、優れたパッケージングを備えており、大人5人が長時間乗車する事が可能でした。インテリア面での特徴は、当時のコンパクトカーとしては珍しかったセンターメーターを採用した事で、エクステリア同様ヴィッツの個性を強く印象付けるものとなりました。
1.3L/1.5Lを追加、更にアイドリングストップ付も
同年8月に、1.3L直4 DOHCの2NZ-FE型エンジン(最高出力88ps/最大トルク12.3kgm)を搭載するフルタイム4WDモデルが追加されました。車両重量が960kg~990kgへと増加した他、リアサスペンションがトレーリング車軸式に変更された事と、全高が10mm高くなった事がFFモデルとの相違点でした。次いで同年10月には、同じ1.3Lエンジンを搭載するFFモデルが追加されました。
2000年10月には、スポーティグレード「RS」が追加され、前述の1.3Lエンジンの他、1.5L直4 DOHC VVT-iの1NZ-FE型エンジンを搭載するモデルが用意されました。後者は、最高出力110ps/最大トルク14.6kgmのスペックを持ち、940kg~970kgの車体を十分スポーティに走行させる性能が備わっていました。トランスミッションは、それぞれ5速MTと4速トルコンATが用意され、駆動方式はFFのみでした。
次いで2001年6月に、当時は珍しかったアイドリングストップ機構を備える1Lモデル「エコパッケージ」が追加され、24km/Lという優れた燃費性能を実現しました。同年10月には初めてのマイナーチェンジを実施し、フェイスリフトと共に装備やグレード体系の見直しが行われました。
そして、2002年12月に2度目のマイナーチェンジを実施し、フェイスリフトや一部仕様変更が行われた他、1.3L FF車のパワートレインが新開発の2SZ-FE型エンジン(最高出力87ps/最大トルク11.8kgm)とCVTの組み合わせに変更されました。同時に、このエンジンにアイドリングストップ機構を組み合わせ、クラストップレベルの25.5km/Lの燃費を実現したグレード「U・インテリジェントパッケージ」が追加されました。
初代ヴィッツは、登場後程なくして生産終了となったスターレットに代わり、トヨタのコンパクトカーの代表格となりました。販売面は大変好調で、スターレットでは及ばなかった「日産・マーチ」を逆転し、このクラス随一のベストセラーカーとなりました。又、ヨーロッパでも「ヤリス」の車名で販売され、同様にベストセラーとなりました。