現在市販されているコンパクトカーや軽自動車の大半が、駆動方式としてFF方式を採用しています。FF方式は、他の駆動方式と比べ室内スペースが広く取れるメリットがある為、絶対的なサイズに制約のある小型車にとって好適だからです。 一方、操縦性の面では、原理上どうしてもフロントヘビーになる為、FR方式などと比べ一歩を譲るとされますが、ファミリーカーの場合はそれも大きな問題とはなりません。
かつてはFR方式やRR方式の小型車が主流
このように現在では主流になっているFF方式ですが、かつては少数派で、FR方式やRR方式の小型車が主流でした。 殊にRR方式は、FF方式と同様ドライブシャフトが存在しない為スペース効率が良く、又FF方式のような複雑な駆動メカニズムも必要とされなかった為、軽自動車や大衆車に採用されるケースが多数ありました。
しかし、前輪荷重が小さい為、直進安定性が劣り、操縦性がオーバーステア傾向になる欠点がありました。 又、後にエンジンがある関係上、どうしてもラゲッジスペースが小さくなり、実用性の点でも難がありました。その後、FF方式の技術が成熟し、次々と市販車に採用されていくと、そのような欠点を持ったRR方式は徐々に廃れていきました。
小型車市場に新たなRRの流れ
現在、新車で購入出来るRR車は、ポルシェ911やスマートフォーツーなど、ごく一部の特殊な車種に限られます。しかし、今年に入り、RR方式の4人乗りコンパクトカーであるスマートフォーフォーと、ルノー・トゥインゴが欧州でリリースされました。両者は共通のプラットフォームを利用する姉妹車で、旧モデルは全く別の車種ながらどちらもFF方式だった為、共に駆動方式を180度転換した事になります。
Twingoのエンジンはリアのラゲッジスペース下にコンパクトに収まる
FF全盛の現在に、敢えてRR方式を採用した理由として、ルノーは「操縦性と小回り性能の向上」を挙げています。確かに、前輪荷重が少ないRR方式なら、FF方式よりもハンドリングの軽快性の点では有利で、前輪廻りのメカニズムがシンプルである分、原理上ステアリング切れ角を大きく取り易くなります。
一方、古典的なRR方式のドライバビリティ上の弱点であった直進安定性の欠如とオーバーステア特性の問題は、リアに搭載されるエンジンの軽量化に伴う従量配分の改善や、サスペンションセッティングの進歩、電子デバイスの搭載などにより、巧みに解消しているようです。又、ラゲッジスペースの面においても、やはりエンジンの小型化の恩恵で後部のスペースはFF方式に遜色なく、かつフロント部分にも荷物が積める為、むしろFF方式に勝ってさえいるようです。
RRながらリアのラゲッジは実用的なスペースを確保
こうして、RR方式のネガを改善したスマートフォーフォーとルノー・トゥインゴ。市場でどの程度受け入れられるのか、興味深いものがあります。