昨年12月にフルモデルチェンジしたスズキの軽乗用車、アルトの販売が好調です。3月の軽自動車販売台数ランキングで第6位となり、同社のベストセラーカーであるワゴンRやハスラーを上回る順位を占めました。又、直接のライバルであるダイハツ・ミライースに対しても、フルモデルチェンジ前はランキングで後塵を拝していましたが、12月以降は逆転しています。
ただでさえ軽い軽自動車を徹底して軽量化
旧モデルとは方向性が全く異なるスタイリングが、ユーザーに受け入れられるのか危惧する声も一部にありましたが、そんな懸念を一蹴するような販売実績を挙げています。この新型アルトの特徴は、ユニークな内外デザインと、徹底した軽量化にあります。
先代アルトは、丸みを帯びたファンシー路線の内外デザインが特徴でしたが、新型は一転してエッジの効いたボクシーなスタイリングとなり、ダッシュボードのデザインも直線を基調としたものになるなど、大きく路線を変えています。
又、全体的なイメージが初代アルトを彷彿とさせる他、Cピラーのデザイン処理が往年のフロンテを意識させるものとなっており、どこか1970年代風の味わいが感じられるのも特徴です。このモダンとレトロが融合したようなスタイリングは、現在の軽自動車の中では異色です。
驚異的な60kgの軽量化は燃費・動力性能に直結
そして、車としての本質に係る面では、車両重量が旧モデルより60kgも軽量化(CVT仕様の場合)されているのは、刮目すべきポイントです。しかも、MT仕様の場合は更に40kg軽く、610kgという際だった軽量を実現しています。
この610kgという車両重量は、4世代も前の旧規格モデルに匹敵する軽さで、車体サイズが大きくなり安全装備が追加されている事を考えると、驚異的な数値です。それでいながら、ボディ剛性は先代よりも30%もアップしているのですから、文句の付けようがない改善です。
こうした軽量化は、燃費性能に如実に反映され、最も燃費の良いグレードで37km/Lという、ハイブリッド車顔負けの省エネ性を実現しています。
更に、軽さは動力性能の向上にも寄与します。新形アルトのパワーウエイトレシオは、NAエンジン搭載のFFモデルで11.9~12.5kg/馬力となりますが、この数値はターボエンジン搭載の軽スポーツカー、ホンダS660の13~13.3kg/馬力を凌ぐものです。
トールワゴン全盛時代に一石を投じる
又、新型アルトは重量軽減対策の一環として全高も下げられ、1,470~1,505mmという、4人乗り軽自動車として最も低い数値になっています。これは、一般的なトールワゴンタイプよりも150mm程低く、操縦安定性や高速時の直進安定性(横風の影響が少なくなる)のアドバンテージは明らかです。
そして、立体駐車場に収まる実質的なメリットも加わる為、良い事尽くめと言っても過言ではありません。このように軽自動車として原点回帰したコンセプトの新型アルトは、大きく豪華になる一方だった軽自動車の流れに一石を投ずるものです。今後も、販売台数などの動向が注目されます。