2018年に先行してフルモデルチェンジしていたハッチバックのカローラスポーツに続き、2019年9月17日にセダンタイプのカローラとワゴンタイプのカローラツーリングが発売された。
53年の歴史を背負って
今回の新型カローラは1966年に初代カローラが発売されてから12代目のモデルとなる。1955年に初代が発売されたクラウンに続くトヨタの代表的なブランドであり、すでに半世紀以上に渡って途絶えることなく販売が続けられている。
言うまでもなく半世紀というのは自動車業界にとっても社会にとっても、とてつもなく長い時間であり、その間、世界的にも日本にも様々な変化があった。30歳で初代カローラを購入した人は83歳となっていると考えると、その時間の経過はとても鮮明となる。
ほぼ同時期に発売された初代サニーは長きに渡ってカローラのライバルとして凌ぎを削った。その当時の多くの人はマイカーを持つことに憧れを持ち、手頃な価格の大衆車が求められていた。
時間の経過とともに日本は豊かになり、他の人よりも少し良いものを求める方向に変化を遂げる。それと共にカローラも少しずつ立派に、それでいて増えゆくトヨタランナップの中で控えめなポジションを維持してきた。
時にはマツダの社運を賭けた5代目ファミリアなど日産サニー以外にも人気となるライバルモデルが登場し、セダンではサニーと戦い、ファミリアとはハッチバックで戦い、ワゴンでは…とあらゆる方向から攻めてくるライバルと戦ってきた。
サニー、ファミリアなどライバルが方向転換する中
カローラの歴史の1つの転機とも言えるのがバブル崩壊あたりと言える。それまで好景気に沸いていた上り調子の日本の景気が傾き始めた。初回車検で下取りが安くなるからと車を買い替えていた層の財布のひもが固くなり、車の保有年数が伸びていった。
モデルチェンジでほんのちょっとだけ立派になっていったカローラも歩みを止めてコストダウンを意識し始めた。1995年発売の8代目カローラのあたりである。同時に日本は高齢化が着々と進行し、カローラ、サニーなどのセダンを購入する層も年齢が高くなっていった。
その後もしばらく日本経済は停滞気味となり、2004年には長年のライバルだったサニーは9代目をもって後継ブランドなく販売終了、ファミリアはアテンザに車名変更、国内におけるCセグメントセダン市場が減少の道を歩む中、各メーカーはそれぞれの経営判断を下していった。
世界市場で戦う中での日本市場の特異さ
2010年代はアベノミクスによる株価上昇によって景気に明るさが出てきたものの、相変わらずの高齢化の進行や若年層の収入伸び悩みもあり、日本国内の自動車はノア、ヴォクシー、ステップワゴン、セレナに代表されるミディアムクラスの箱型ミニバン、N-BOX、タントなどの軽スーパーハイトワゴン、そしてSUVが販売台数上位を占め、カローラのみならずセダン自体の市場がどんどん衰退、セダンモデルは廃止の道を辿っている。
箱型ミニバンや軽自動車の快適性はどんどん上がり、うるさいクルマ・がまんするクルマというかつての存在ではなくなっていった事もあり、ミニバン買っておけば子供が増えても両親を乗せるのにも便利。なので当然の流れかもしれない。
一方、カローラと言えば、現行プリウスを少し上のカテゴリーに移した事もあり、先代の11代目カローラはボディサイズを5ナンバー枠に収め、パワーユニットはアクアやヴィッツなど下のモデルと共有するなどかなり保守的なものとなっていた。
上昇する安全基準による重量・コスト増とディーラー収益の狭間で
海外ではフォルクスワーゲンやBMWなどのプレミアムメーカーと戦いつつ、アジア価格を武器とするメーカーとも戦う。日本国内では長年カローラクラスのセダンを乗り継ぐお得意様も無視は出来ない。かと言って若年層を取り込まないとモデル継続が難しくなる。長年グローバル企業としてトップクラスで戦ってきたトヨタならではの悩みかもしれない。
また、別の側面ではABS、エアバッグ、衝突安全など安全装備の充実だけでなくブレーキアシストなどの先進安全技術の導入、そして低燃費対応など重量増、コスト増とクルマに求められる要求水準が上がり続けている。
カローラが大衆車である以上は価格上昇を抑えるのが必須要件である。カローラの商品企画は物凄い多くの要素を高次元で成立させる非常に難易度の高い仕事であったと思われる。
グローバル市場との整合性を取るべくTNGAボディ、リヤサスにダブルウィッシュボーン式を採用。性能を一段階上げながら、国内向けはボディサイズを小さくし、先進安全装備を標準化しつつ価格上昇を抑えるという離れ業とも言えるような解決策を取ったのはさすがトヨタと言わざるを得ない。
今回の新型カローラで英断というか、よく決意したなと思えるのが「ディスプレイオーディオ」の採用である。ここ10年でスマートフォンの性能が大幅に向上する一方、自動車のナビゲーションの進化速度は止まっていたと言えるくらい遅いものだった。
理由としては自動車の車内という高温・低音・振動という厳しい環境下で確実に作動するという設計要件を満たすという面もあるが、20~30万円というナビゲーション装着で稼げていたディーラーの収益をスマホ連動の解禁で失ってしまう危険があるからだ。
クルマに常備するのはモニターと最低限のシステムにしておいて、母体となる機能はスマートフォンから転送すればユーザーのコスト負担は小規模で済む。一方でディーラーの収益は下がる。メーカー側もわかってはいたけれど、なかなか手を付けられなかった伏魔殿とも言える領域にメスを入れた。新型カローラでは、見えづらい部分ではあるがトヨタは大きな決断をしている。
若年層の支持を取り込めるか
保守的な高齢層が求める「コンパクトで低価格なセダン」という要件をベースモデルで満たしつつ、新型カローラでは若年層の取り込みにもひと工夫をしている。
モデルライフ中期や末期であれば当然のように追加されるお買い得な「特別仕様車」だが、今回の新型カローラでは特別仕様車ばりのお買い得感をカタログモデルで最初から投入している。
上記は1.8Lガソリンエンジン搭載のスポーティグレード「W×B」のセルフ見積もり。
「W×B」はToyota Safety Senseが標準装備で、さらにエアロ、本革ステアリング、TFTメーター、17インチアルミ、LEDヘッドランプ、フォグ、合皮ハーフレザーシート、ディスプレイオーディオ(7インチ)など装備が充実している。
殆ど装備は付いているので、オプション選択で画面9インチアップグレード、フロアマット、ETC装着しても乗り出し価格は256.5万円となる。値引きを考慮すれば250万円以下なる為、軽自動車のスポーティモデルにオプションを追加していった場合との価格差はかなり小さい。
維持費という面では税制優遇のある軽自動車には及ばないものの、何段階も上の車格で最新装備を含むこれだけの装備が付いていて価格差は僅か。さすが王者トヨタと言える。
新型カローラに込めたトヨタの熱意が日本の若年層に届くのか、販売動向に注目したい。
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