自動車の取り回しの良し悪しには、車体サイズの他に、最小回転半径の大小が大きな影響を及ばします。車体サイズが大きな車種でも、最小回転半径が小さければ意外と取り回しが楽で、事前の予想程は持て余さずに済みます。
回転半径の小さいトヨタiQ
逆に、5ナンバーコンパクトカーでも、最小回転半径が大きいと切り替えしの回数が多くなり、意外と不便に感じるものです。現在新車で販売されている国産乗用車の中で、最も最小回転半径の小さい車種は「トヨタiQ」で、その数値は3.9mです。ホイールベースが軽乗用車よりも短く、かつステアリング切れ角が大きい為、軽乗用車以上の小回り性能を実現しているのが印象的です。
一方、軽自動車はと言えば、新車で販売されている乗用車で4mを切っている車種は皆無ですが、かつて販売されていた「スズキ・ツイン」は、超ショートホイールベースにものを言わせ、3.6mという数値を誇りました。
しかし、商用車までカテゴリーを広げれば、現行車種の「スズキ・キャリイ」と「ダイハツ・ハイゼットトラック」が、同様に3.6mとなっています。一方、輸入車では、現時点では国内には導入されていないものの、新形「スマート・フォーツー」が、同じく3.6mという数値を実現しています。
如何にホイールベースが短いとはいえ、普通乗用車でこの数値は驚異的です。こららの最小回転半径が4mを切る車種は、狭い路地や駐車場等において、抜群の取り回しの良さを発揮する筈です。又、片側一車線の道路でも、切り替えしなしでUターンが出来る事でしょう。
最小回転半径が7mを超える車種も
逆に、最小回転半径の大きい車種は、アメリカ車や設計の古いSUVなどによく見られます。例えば、「ジープ・ラングラー・アンリミテッド」などは、SUVとしては比較的コンパクトな車体サイズにも関わらず、最小回転半径が7.1mもあります。
これだけ小回りが効かないと、路地や狭い駐車場等では、かなり苦労する事でしょう。
又、既に生産終了となっている車種ですが、コンパクトカーのカテゴリーに入る「クライスラーPTクルーザー」も最小回転半径が6.1mあり、コンパクトカー=街中向きという概念が当てはまらない車でした。
それから、ビンテージの領域に入っている車種では、コンパクトなミッドシップ方式のホットハッチモデル「ルノー5ターボ2」などは、最小回転半径7mという車体サイズからは想像も出来ない程の数値であり、ユーザーは取り回しに苦労したようです。
その他では、現行のホットハッチモデルにも、ベースモデルよりも大幅に最小回転半径が大きくなってしまった車種が存在します。例えば、「アバルト500」は5.6m、「トヨタ・アクアG’s」は5.8mあり、ベースモデルよりもそれぞれ0.9m~1mも大きくなっています。
トレッドの狭い車種に太いタイヤを履かせている為、ステアリング切れ角がすくなくなり、このような現象が起きてしまっています。こうした車種は、車体がコンパクトであっても、街中の足代わりとしては問題があります。