日本は、オートマ車の普及率という点において、世界でもトップの国です。現在、路上を走行している乗用車の90%以上がオートマ車であり、新車販売の約95%の比率を占めると言われます。アメリカも日本と同様オートマ大国ですが、実のところ僅かながら日本よりも比率が低く、日本人が如何にオートマ車好きであるかが分かります。
欧州全体でのオートマ車の平均普及率は
一方、欧州に目を向けると、欧州全体でのオートマ車の平均普及率は10%程度に過ぎず、日本とは正反対の状況になっています。日本も、1970年代から80年代頃までは、欧州と同様マニュアル車が主流でした。しかしその後、オートマチックトランスミッションの性能向上や製造コストの低下などに伴い、次第にオートマ車の比率が高まり、ついには逆転して現在に至っています。これ程までにオートマ車が急速に普及した国は他にありませんが、その大きな要因として、欧米以上に深刻な渋滞が挙げられるでしょう。
渋滞路では、クラッチを操作する左足の負担が大きくなる上、エンストしないよう神経を使います。その点、クラッチ操作がなくエンストの心配もないオートマ車は、ゴーストップの連続する状況でもイージーに運転出来る為、日本の道路事情に適しています。又、日本人の国民性として、一旦良いと認識され始めた物が一気に広まる傾向がある事も、オートマ車が急速にシェアを伸ばした一因と言えそうです。
オートマ車にはないマニュアル車のメリットも
その結果、現在日本国内で新車で手に入るマニュアル車の車種は決して多くはなく、結果として一部の高齢ドライバーやマニア層を対象にしたニッチ商品になっています。しかし、マニュアル車には、オートマ車にはない実利的なメリットもあります。それは、オートマ車で度々発生する、暴走が生じにくい事です。2ペダルのオートマ車は、ペダルをとっさに踏み間違えるミスが生じる事があり、それによる暴走が一時は社会問題化しました。
一方、3ペダルのマニュアル車は、アクセルペダルが単独操作であるのに対し、ブレーキペダルの操作はクラッチペダルの操作とセットになる為、踏み間違えが起きにくくなります。又、マニュアル車は、両手両足を駆使して運転操作をしなければなりませんが、運転を積極的に楽しみたい人にとってはそれが利点にもなります。
しかし、マニュアル車に抵抗感がない人でも、坂道発進が好きだと言う人はあまりいない筈です。特に後続車がいる状況で坂道で停車した場合、再発進時に万が一エンストさせて後ずさりしてしまう事を考えると、非常にプレッシャーが掛かかります。
そのような場合は、坂道発進アシスト機能と、アイドリングストップ機能(エンストしても、クラッチを踏み直すだけでエンジンが再始動)の両方を採用した車種を選択すれば、問題が解消します。このように車種を厳選すれば、日本でマニュアル車に乗る必然性も、十分ありと言えるのではないでしょうか。