現在、国産車ではコンパクトカーや軽自動車を中心に、トランスミッションにCVTが広く採用されています。上記のような小型車のみならず、排気量2L以上のセダンやSUV、ミニバンなどに採用されるケースも少なくなく、日本はさしずめCVT大国と言えます。日本と同様にAT大国であるアメリカは、どちらかと言えばCVT向きではない大型車の割合が大きい事もあり、トルコン式が主流になっています。
日本でCVTが普及した背景
一方、欧州はMT車の比率が高い為か、ATには機構的にMTに比較的近いAMT(2ペダルMT)やDCTが採用されるケースが多くなっています。日本でこれ程までにCVTが普及した背景には、様々な要因が考えられます。まず、日本でトルコン式AT車が普及し始め、ようやくMT車との比率が逆転した当時は、トルコン式ATの効率は決して高いとは言い難いものでした。
ギア段数は3速か4速しかなく、トルコンのスリップも大きかった為、ユーザーはイージードライブと引き換えに、走行性能や燃費性能にはある程度の我慢を強いられました。そこに登場したのが、高効率を謳うCVTでした。1980年代に、まずスバルが国内メーカーとして初めて商品化し、日産もそれに続きました。
その後、CVT車のバリエーションは増え続け、殊にコンパクトカーや軽自動車においては、トルコン式を駆逐し主流となっていきました。CVTの特徴として、常時エンジンの最大トルク近辺の回転数を維持した走行が出来る為、特にパワーの限られた小排気量車に好適である事が挙げられます。
変速ショックがなくスムーズに車速が上がっていくCVTの特性
金属ベルトのスリップによる伝達ロスはあるものの、それでもかつての3速や4速のトルコンATなどよりも総合効率は勝っており、燃費性能においても凌いでいました。特に、燃費を気にするユーザーが多い日本では、この燃費面でのメリットが好意的に受け入れられたようです。又、機構上変速ショックがなく、スムーズに車速が上がっていくフィーリングが、日本人の繊細な感覚にマッチした事も普及の要因として考えられます。
一方、初期におけるCVTは低速域での制御に難があり、アクセルのオンオフ操作に伴いスナッチングが生じる事がありました。又、クリーピング現象がなかった為、坂道発進で一瞬後にずり下がる現象も起きました。しかし、現在では制御の改善やクリーピング現象の付加、坂道発進アシスト機能の搭載などにより、そうした欠点はほぼ解消されています。
それと、エンジンの回転が上がった後から車速が追い付いて来るような独特な癖も、現在ではかなり軽減されています。又、燃費面でのメリットにも更に磨きが掛かっている事もあり、日本におけるCVTの王座は、当面は揺るがないものと思われます。