水平対向エンジンをご存知でしょうか。スバル(富士重工業)車の最大の特徴は?と聞かれれば、水平対向エンジンを思い浮かべる人が多いかと思います。
国産自動車メーカーでも異彩を放つエンジンを使用しているスバルですが、水平対向エンジンを四輪自動車に使用しているメーカーは世界的にも珍しいのが現状です。
水平対向エンジンとは
水平対向エンジンとは、その文字で表されている通り左右に設置されているエンジン内のピストンが 水平方向ににピストン運動を繰り返すエンジンを言います。
一般的な直列のエンジンは、上下にピストン運動をして燃料を燃焼させますが、水平対向エンジンでは左右の運動に変わります(エンジン縦置きの場合)。水平対向エンジンのメリットとしては、重心を低くできること、左右のピストン運動により相互の振動が打ち消しあって、振動・音を少なく出来る点があります。エンジンのピストン運動になぞらえて「ボクサーエンジン」と呼ばれることもあります。
SUBARUテクノロジームービー 「水平対向エンジン篇」
水平対向エンジンを採用している自動車メーカー
現在、水平対向エンジンを四輪自動車に採用している自動車会社は、世界的にみてもポルシェとスバルしかありません(スバルと共同開発したトヨタ86を除いて)。
ポルシェといえば世界的なスポーツカーメーカーですが、どのモデルも高額で、気軽に購入できるクルマではありません。日本で唯一水平対向エンジンを採用しているのがスバルです。スバルであれば、ポルシェと同じ構造をもったエンジンを低価格で乗る事が出来ます。
水平対向エンジンの魅力
スバルのインプレッサとレガシィに乗った際に、まず、そのエンジン音にとても魅力を感じました。「ボッ、ボッ、ボッ」という独特のボクサーサウンドは、運転する前から、気持ちを高ぶらせてくれます。
エンジンは高回転型で、アクセルを踏めばすぐに吹けあがりました。ですが、普段のエンジン音はとても静かで、エンジンが始動していないのかと錯覚してしまう時があるほどです。エンジンに魅力を感じることが出来るメーカーは、それほど多くはないと思います。
ただ、現在のスバル車に搭載されている水平対向エンジンは、以前のような「ボッ、ボッ」という排気音はしなくなりました。これは排気管の取り回しを見直した事で、排気管内での排気干渉を低減した事によります。
具体的にはエキゾーストマニホールドを不等長のものから等長のもの(コストが掛かる)に変更した事によります。「ボッ、ボッ」という音は不等長マニホールドが生み出していました。レガシィは4代目モデル(’03頃)、インプレッサは2代目の中期モデル(’02頃)から等長になりました。
HKSによる不等長エキマニと等長エキマニの音質比較(前半が不等長)
HKS Exhaust Manifold 14019-AF002
スバル インプレッサ GRF エクシーガ YA5
純正エキマニとHKS製等長エキマニの音質比較になります。純正の不等長エキマニの独特なボクサーサウンドに対して、等長エキマニに変えることで直列4気筒の様なサウンドになります。映像はエクシーガですが、インプレッサでも同じような音質変化が得られます。
この見直しによって、スバルの水平対向エンジンは低重心・低振動に加え静粛性も一段と高まり、同じ四気筒で一般的な直列式よりも優れた走行フィーリングをもたらしています。
どうしても懐かしい不等長サウンドにしたい方は、社外品の不等長エキマニとマフラーに換装する事によって実現が可能です。
ただし、水平対向エンジンも万能ではなく、直列四気筒と比べるとエンジンヘッドが2つある為、部品点数が多く、整備性、コスト面からは不利なものとなっています。また、左右にエンジンヘッドが張り出す事により、横方向でのエンジンレイアウトが厳しくなり、長いストロークを確保するのが難しいのも難点と言えば難点です。
懐かしい「ボッ、ボッ」音はしなくなりましたが、その代わりに素晴らしいパワーユニットへと進化を遂げたスバルの水平対向エンジン。馴染みのない方は、一度スバルのディーラーで試乗されることをお勧めします。日本の技術力と個性豊かな車の存在に驚かれると思います。